研究概要 |
強相関電子系酸化物として代表的なペロブスカイト型マンガン酸化物La1-xSrxMnO3および銅酸化物高温超伝導体 (Bi,Pb)2Sr2Ca2Cu3Ox(Bi,Pb-2223相)について、それらの電子自由度の秩序状態を収差補正走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いてサブナノスケール状態解析することを試みた。それぞれ合成された多結晶試料をイオンミリング装置により薄板化し、電子回折法により結晶方位の調整を行った後、電顕観察を行った。ペロブスカイト型マンガン酸化物La1-xSrxMnO3に対しては、液体窒素冷却ホルダーを用い100K-290Kの温度領域で試料面に対する垂直磁場の強度を制御しながらローレンツ法によりスピン状態を解析した(加速電圧300kV)。その結果、x=1/8, 100Kにおける強磁性絶縁相に対して~3.6kOeの磁場を印加すると直径~200nmのナノスケール磁気バブルが形成されることを見出した。このバブル形成は強磁性絶縁相における軌道秩序に関連する巨大な磁気異方性を示唆している。また、銅酸化物高温超伝導体Bi,Pb-2223相に対しては、室温において低加速収差補正STEM法によりHAADF(高角度環状暗視野)像及びBF(明視野)像観察を行った(加速電圧80kV)。その結果、ホールがドープされたCuO2面の結晶粒界における連続性・不連続性がサブナノスケールで観察された。これは多結晶材料における結晶粒界と超伝導特性との相関を示唆している。
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