研究課題/領域番号 |
23710115
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
長井 拓郎 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (90531567)
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キーワード | 透過型電子顕微鏡 / 強相関電子系 / ローレンツ顕微鏡法 / 磁気バブル |
研究概要 |
収差補正走査透過型電子顕微鏡を用い、強相関電子系材料として代表的なビスマス系高温超伝導体 (Bi,Pb)2Sr2Ca2Cu3Ox (Bi,Pb-2223相)及び強磁性ペロブスカイト型マンガン酸化物La1-xSrxMnO3の多結晶体について、それらの電子自由度の秩序状態をサブナノスケール解析することを試みた。それぞれ、イオンミリング法により薄板化した電顕観察試料について、電子回折法により電子線入射方位の調整を行った後、観察・分析を行った。 ビスマス系高温超伝導体Bi,Pb-2223多結晶体に対しては、加速電圧80kVにおいて低加速収差補正STEM法によりHAADF(高角度環状暗視野)像及びBF(明視野)像観察及びEELS分析を行った。その結果、結晶粒内においてはホールがドープされたCuO2面の連続枚数の変化(積層不整)が観察され、結晶粒界においてはCuO2面の連続性・不連続性が観察された。ペロブスカイト型マンガン酸化物La1-xSrxMnO3 (x=1/8)に対しては、加速電圧300kVにおいて100K-290Kの温度領域で、ローレンツ顕微鏡観察を行い、強度輸送方程式法によりスピン状態を解析した。試料に対して所定の垂直磁場を印加して観察を行った結果、100Kにおいて形成される強磁性絶縁相のストライプ磁区に対して~3.6kOeの垂直磁場を印加すると直径~200nmのナノスケール磁気バブルが形成され、このバブルの安定性は試料厚さと相関があることが確認された。これはMultiorbital Mott絶縁体において磁気バブルが形成することを示した例であり、電場による磁気バブル制御を用いた新しい磁気デバイスとしての応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、強相関電子系酸化物における電子自由度の秩序状態を極低温収差補正透過型電子顕微鏡を用いてサブナノスケールで解明することを目的としている。La1-xSrxMnO3系のスピン状態の解析の結果、現在までに、今まで報告がなされていなかったMultiorbital Mott絶縁体(強磁性絶縁相)におけるナノスケール磁気バブルの形成が明らかとなり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ペロブスカイト型遷移金属酸化物等の電荷軌道秩序相、強磁性金属相、強磁性絶縁相、反強磁性絶縁相およびそれらの電子相分離・電子相競合について電子状態のサブナノスケール解析を行う。また、これらの強相関電子系酸化物の人工格子・ヘテロ接合界面の原子サイトにおける電子状態について直接観察、解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品として歪み場のナノスケール解析のためのソフトウエアを購入し、消耗品として試料作製用試薬を購入する。また、論文校閲に係る費用及び論文投稿費を使用する。
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