25年度の研究では、動的に相分離過程にある2-ブトキシエタノール(2BE)と水の混合溶液を反応場として作製した金ナノ四角形プレートについて,顕微鏡下で散乱スペクトルを調べることによって,その光学的性質を調べた。特に,孤立した金ナノ構造体の形状,配向をSEMによって確認した後に暗視野光学顕微鏡下で同じ粒子を観測することによって,粒子の形状とその散乱スペクトルの関係について調べた。また,溶液中への紫外光パルスレーザーの繰り返し照射によって,金四角形プレートがその厚さをほぼ一定にしたまま長辺の長さが成長したことから,金ナノ四角プレートの表面ではく,その縁においてのみ,成長が紫外光によって自己触媒的に進んでいる可能性について議論した。特に,相分離過程にある2BE-水混合溶液中と均一な混合溶液中で光照射による成長の仕方が異なることが分かった。 さらに,白金酸イオンを含む2BE-水混合溶液を試料とし,ナノ秒赤外光パルスで相分離過程を誘起した後に紫外光パルスを照射することによって,相分離過程にある溶液中で白金酸イオンの光還元反応を誘起した。赤外光パルスを照射せずに混合溶液中で光還元反応を誘起した際には紫外線励起によって赤色の発光を示す生成物が得られた。一方,近赤外光パルスを用いて相分離過程にある溶液中で光還元反応を誘起した際には,赤色だけではなく,紫外領域においても発光を示す生成物が得られた。これらの溶液を乾燥させた後,SEMを用いて生成物を観測すると得られた白金ナノ粒子の形状が赤外光パルスの有無によって異なることが分かった。これらの結果から金の還元反応だけではなく白金イオンの光誘起還元反応による白金ナノ構造体の合成においても,動的に相分離過程にある溶液が,反応場として単なる二液混合溶液とは異なる性質を持っていることを示した。
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