本研究では、平成23年度には、3層グラフェンのMバンド強度とラマンシフト、励起光エネルギーと積層構造の関係を数値計算と共同研究者らによる実験との比較から明らかにした。特にMバンドから3層グラフェンのABA積層とABC積層を判別できることを示した点は重要である。 平成24年度には、1層グラフェンのG'バンド、G*バンドまた1700から2300cm-1にある複数のラマンピークのラマンシフトと線幅のフェルミエネルギー依存性、2層グラフェンにおける1650から1800cm-1にある複数のラマンピークのラマンシフトと線幅のフェルミエネルギー依存性、さらに物理的背景を共同研究者らと明らかにした。特にラマンピークのラマンシフトと線幅のフェルミエネルギーの関係からラマンピークの起源を同定できることを示した点は重要である。 平成25年度には、積層構造がねじれた2層グラフェン(TBG)におけるGバンド強度とラマンシフト、ねじれ角、励起光エネルギーとの関係を数値計算と共同研究者らによる実験結果との比較から明らかにした。特に共鳴ラマン分光を利用したTBGの試料評価の一つの指針を示した点は重要である。 平成26年度には、TBGの状態密度中のファンホーブ特異点とモアレパターンの関連、1層グラフェンのGバンド強度とGバンド強度増大が起こらない励起光エネルギーとねじれ角におけるTBGのGバンド強度との強度比および励起光エネルギー依存性を共同研究者らと示した。特に共鳴ラマン分光からTBGのファンホーブ特異点の起源を示した点は重要である。 本研究の成果は、グラフェンの共鳴ラマン分光における光学特性、またグラフェンを用いた研究・開発におけるグラフェン試料を評価する際の指針を示した点で重要である。
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