研究課題/領域番号 |
23710127
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
日野 和之 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (60362307)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 金ナノロッド / 液晶分子 / 外部電場 / 光学機能材料 |
研究概要 |
平成23年度は、金ナノロッド溶液に電場をかけて光吸収や小角X線散乱(SAXS)を測定できるセルを作製した。2枚のITO透明電極(厚み300 μm)の間に溶液を挟んだ。溶液層の厚みは300 μm、印加電圧は1300 Vとした。これは液晶の配向電場強度に対応する。 物質構造科学研究所フォトンファクトリーでSAXS測定を行ったところ、これまでの予備実験と同様に、電場を印加しない場合(OFF)に対して電場を印加した場合(ON)にSAXS強度が減少することを確認した。ここで、電場方向と入射X線の方向は一致している。これまでの実験から、液晶結合金ナノロッドには長軸方向に並び合う相互作用が強く働くことが確認されている。そのため、電場を印加すると液晶分子の電場応答性によって、電場方向への配向度がより向上するのではないかと考えている。すなわち、電場ONの場合にSAXS強度が減少したのは、ナノロッドが電場方向に並び合うためにX線散乱に寄与する試料の実効体積が減少したためであると考えられる。 続いて、光ファイバー分光器を用いて、プラズモン吸収の偏光異方性を測定した。その結果、電場OFFの場合に対して電場ONの場合に偏光異方性が増大することを観測した。また、対照実験として行った液晶分子が結合していない金ナノロッド水溶液の偏光異方性は、電場を印加しても変化しなかった。偏光異方性は試料が異方的に配列する場合に増大する。これらの結果は、液晶結合金ナノロッドが電場を印加することによって並び合うことに対応している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、液晶分子が結合した金ナノロッド溶液に電場をかけて光吸収スペクトルや小角X線散乱測定が行えるセルを作製し、電場強度に対してロッドの配向度がどのように変化するかを調べることを目的としていた。本年度の研究成果は、これをおおむね達成しているが、ナノロッドの電場配向のアスペクト比依存性や3次元配列の観測が課題として残っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、ナノロッドを液晶中にドープして電場をかけ、融点以下に冷却して配列を固定した複合材料を作製し、ラマン散乱強度の増幅率、3次の非線形感受率を求める。はじめに、ナノロッドに結合した液晶分子について、近赤外の励起光を用いてそのラマン散乱強度の増幅率を観測する。それから、空間分解能の高い近接場顕微鏡で、ナノロッド配列の間隙を観察しながら散乱強度の測定を行うことで局在電場の効果を調べる。3次の非線形感受率を求めるには電場変調法を用いる。以上の非線形光学効果は、ロッド間隔距離に強く依存する。アルキル鎖長を変えた液晶チオール(C3~C10)を用意しているので、これらを用いて試料を調製し、非線形光学効果のロッド間隔依存性を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に研究備品の整備はほぼ完了した。平成24年度は、ナノロッドを液晶中にドープして電場をかけ、融点以下に冷却して配列を固定した複合材料を創製し、その非線形光学機能を追究する計画である。研究費は、薬品、光学部品、電子部品の購入を中心に使用し、外部研究機関との打ち合わせや研究成果の学会発表に旅費を活用する予定である。
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