研究課題/領域番号 |
23710127
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
日野 和之 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (60362307)
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キーワード | 金ナノロッド / 液晶分子 / 外部電場 / 光学機能材料 |
研究概要 |
平成24年度は、液晶分子が結合した金ナノロッドのアスペクト比を変えて、物質構造科学研究所フォトンファクトリーで小角X線散乱(SAXS)測定を行った。試料のDMF溶液を2枚のITO透明電極(厚み300 μm)で作製したセルの中に加えた。溶液層の厚みは300 μm、印加電圧は1300 Vとした。これは液晶の配向電場強度に対応する。実験では、電場を印加しない場合(OFF)に対して電場を印加した場合(ON)にSAXS強度が減少することを確認した。この変化は、OFF→ON→OFFでSAXS強度が回復したことから、電場による集合状態の変化であることを証明できた。対照実験として行った液晶分子が結合していない金ナノロッド水溶液に対するSAXS測定では、SAXS強度の電場変化は観測されなかった。また、アスペクト比が2, 4, 6, 8と大きくなるにしたがって、SAXS強度の減少率が大きくなることが分かった。この変化は、液晶分子が結合することによってナノロッドのアスペクト比すなわち異方性が大きい場合に、電場方向にナノロッドが整列しやすくなることを示している。 次に、電場をかけて、配列を固定する複合材料の作製を目指すために、ナノロッドを液晶中にドープすることを試みた。しかしながら、ナノロッドは分散せず、凝集してしまった。もう一つの方法として、北海道大学電子科学研究所で、ナノロッドを高分子薄膜中に固定することを試みた。この方法で、ナノロッドは十分に分散し、薄膜中でプラズモン吸収を確認できた。しかしながら、膜の表と裏で絶縁性が保たれず、電場印加の効果を調べることはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は、ナノロッドを液晶中にドープして電場をかけ、融点以下に冷却して配列を固定した複合材料を作製することを目的としていた。本年度の研究成果は、これを達成することはできなかったが、高分子薄膜中への固定は実現可能性が高いことが分かった。また、電場OFF→ON→OFFでSAXS強度が回復したことは、強度減少が凝集によるものではないことを証明するものであり、非常に重要な結果である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、ドープ媒体としてナノロッドの溶解度を向上させるためにシアノビフェニル系以外の液晶を調べたり、高分子薄膜の絶縁性を向上させたりして、複合材料の作製を実現する。それから電場を印加して、その光学特性パラメーターを求める。最終年度であるため、これまでの電場効果の実験結果についてまとめ、学術論文として発表することを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、複合材料を作製して、その非線形光学機能を追究し、研究成果を発表する計画である。研究費は、薬品、光学部品、電子部品の購入と研究成果の学会発表や論文投稿に関連する費用に活用する予定である。
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