研究課題/領域番号 |
23710131
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
谷口 貴章 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (50583415)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 触媒 / セリア / ナノシート |
研究概要 |
平成23年度の研究実績は以下の通りである。1.酸化セリウム層状体の合成と構造評価界面活性剤(ドデシル硫酸ナノトリウム)を用いた水溶液プロセスにより、セリアナノシート層状体の合成に成功した。得られた層状体について、透過型電子顕微鏡を用いてその構造を詳細に評価した結果、ナノシート層はホタル石型CeO2構造を有しており、またその厚さは1.5nm程度であることが確認された。この厚さはホタル石型の単位格子およそ3層分である。、我々が合成の目的としている格子一層厚みのナノシートよりは厚いが、この程度の薄さを有する酸化セリウムナノシートの合成は報告されていない。また、セリアナノシートは単結晶ではなくナノサイズのグレインを有する多結晶体であることも明らかにした。これは反応中間物である水酸化セリウムの分解により酸化物が生成したことを意味している。2.酸化セリウム層状体の発光スペクトルの解析上記の酸化セリウム層状体の発光特性の解析を行ったところ、層状体は非常に強い紫外発光を示すことを明らかにした。発光スペクトル解析から、Ce3+の5d-4f遷移により発光が得られていることが明らかになった。通常、酸化セリウムは欠陥由来の微弱な発光しか示さないため、層状構造自体が発光に大きく寄与していると考えられた。それを実証するために、XPS、FT-IR等によりナノシート・界面活性剤界面の電子状態・結合状態を評価したところ、界面には高濃度でCe3+が存在しており、それらは界面活性剤のスルホン基と共有結合していることを明らかにした。したがってナノシート界面はナノシート内部や、バルク体の表面と全く異なった状態であり、界面に位置するCe3+は消光の原因となる欠陥やOH基と相互作用しないため、発光過程を活性化したと結論づけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はセリアシングルナノシートの合成、キャラクタリゼーション、触媒評価、及びハイブリッド型セリア層状体の合成、キャラクタリゼーション、触媒評価を目的としている。この目的を達成するために平成23年度の研究計画では(1)セリアシングルナノシートの剥離、形状・構造解析(2)セリアシングルナノシートの電子状態、欠陥構造解析・触媒特性評価・生成メカニズムの解明を実施することした。平成23年度は研究実績にも示したように上記の計画どおりに研究を遂行している。したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
24 年度上半期では、ホスト層の触媒活性を制御するため、"ホスト層への異種金属イオンの置換ドーピング"を行う。下半期ではセリアシングルナノシートと種々の有機分子からなる層状セリア触媒を合成し、触媒活性および触媒耐久性についての評価を行う。さらに、層間のCu イオン・酸化物修飾も実施し、触媒選択性を制御する。・ホスト層への異種金属イオンドーピングによる触媒活性制御/ドーパントイオンとしてCu2+, Ni2+, Fe2+、Zr4+等の遷移金属イオン、およびLa3+, Y3+等の希土類イオンを予定している。合成ではドーパントイオンが共沈反応によりセリア格子内に取り込まれるようにpH を調整する。生成物については、組成分析、結晶構造解析、電子状態解析、CO 酸化により系統的な評価を行う。・ゲスト層の分子置換による耐久性制御/以下に示す2種のプロセスにより触媒耐久性を有する新規層状セリアを構築する。1.有機アニオンの剥離ナノシートへのインターカレーション、2.DS/セリア層状体の層間アニオン交換/層間分子としては、まずESD 法で用いるDS (C12H25SO4-)と同様に硫酸を官状能基を持ちアルキル鎖長の異なるヘキシル硫酸(C6H13SO4-) オクチル硫酸(C8H17SO4-) デシル硫酸(C10H21SO4-)等を用いる。続いてオレイン(C18H33O2-)、ステアリン酸(C18H35O2-)等のカルボン酸官能基をもつ有機アニオンからなる層状体を合成する。これらについて触媒活性、および触媒耐久性を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は物品費、消耗品、旅費、その他を含めて2,000,000円の研究費があり、543.127円を支出した。未使用金が生じたのは購入予定であったテフロン密閉容器と真空乾燥機を同年度に採択された他科研費で購入したためである。また、研究をより効率的に推進するために研究協力者である大学院生の学会発表を先送りした分も未使用金となった。平成24年度は、23年度の未使用額と合わせて2,645,873円の研究費がある。これらを試薬等の消耗品の購入・申請者および協力者の国内外での学会発表のための旅費・論文投稿のための英文校閲費に使用する。また、23年度の未使用額を質量分析装置(TG分析装置)の購入にあて、触媒特性を効率的に評価できるように活用する。
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