本研究課題では、デンドリマーの新規な大量合成法を開拓し、得られたデンドリマーを利用し機能性ナノ材料を創製することを目的としている。平成23年度は、多段階交互付加(AMA)法という新規なデンドリマー合成法を用いることにより、ポリオール/ポリアクリレートデンドリマーを100グラムスケールで大量合成可能であることを見出した。平成24年度には、デンドリマーのワンポット合成法を開拓し、新規なポリケイ皮酸デンドリマーを合成した。本デンドリマーは、特徴的な化学構造のコンフォメーション変化に伴い、特異的な光反応挙動を示すことを見出すことができた。本年度は、新たに以下の2項目の成果を見出した。 (1)光重合性デンドリマーの合成と特性評価、および光ナノインプリント感光樹脂への応用展開 末端にオレフィン部位を有するポリエンデンドリマーを合成し、汎用の光重合開始剤およびポリチオールと混合し、新規なエン・チオールUV硬化材料を創製した。エン化合物をデンドリマー化することにより、光硬化速度(感度)が大幅に向上するとともに、重合収縮率を3%程度まで軽減させることができた。また、反応性希釈剤(低分子エン化合物)を共存させることにより、感度を低下させず、樹脂粘度を調節できることを見出した。このようなポリエンデンドリマー/反応性希釈剤/ポリチオール―3成分系UV硬化材料は、良好な光ナノインプリント感光材料として機能することを見出した。 (2)水素結合性デンドリマーの合成と末端修飾 末端にピリジル基を有する水素結合受容性デンドリマーを合成し、任意のカルボン酸誘導体(水素結合供与性ゲスト分子)との水素結合能を検討した。その結果、カルボキシル基/ピリジル基間での水素結合が自発的に形成することにより、両者を混合するだけで、デンドリマー末端を良好に所望の機能性部位で末端就職できることを見出すことができた。
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