研究課題
最終年度としてアモルファス炭素の構造分類に関する研究のまとめを行った。昨年まではアモファス炭素構造の分類に必要なサンプル構造の準備が上手くいかずに遅れが出ていた。原因として、サンプル構造の作成としてアニーリングやプラズマ化学蒸着による堆積など実験を模擬したアモルファス炭素の作成を行ったものの、生成された構造の種類がそれらの作成法に非常に強く依存することが明らかになり、理論的に一般化された構造の分類をできるほど十分な種類のサンプルが採取できなかったことにある。しかし、一年間の延長期間を利用して、マルチカノニカル分子動力学法によるサンプル構造の作成を試みたところ、効率の良いアモルファス構造のサンプリングを行うことができた。以前にも同手法の採用を試みたことはあるが、その際に用いた原子間相互作用を扱うBrennerポテンシャルモデルの構造変化のエネルギーバリアが非現実的に高く、sp2リッチな構造以外が採取できなかった。しかし、sp3リッチなダイヤモンドライクカーボン(DLC)の作成や高圧化のグラファイトからダイヤモンドへの転移などを再現するようにH25年度に開発した独自のポテンシャルモデルをマルチカノニカル分子動力学と併用することで、幅広い構造のサンプルが可能となった。その結果、実験から経験的にしか分類されていなかったsp2リッチおよびsp3リッチなアモルファス炭素の間には確かに0.1-0.2eV程度のバリアがあることを突き止めた。これはDLCに代表されるアモルファス炭素の産業応用における寿命等に関連した重要な物理量である。また、sp2リッチながら高い密度を持つ新しい構造の存在も示唆された。このように、独自に開発したポテンシャルモデルとマルチカノニカル分子動力学の併用によりアモルファス炭素の構造分類という当初の目標設定に対して、一年の遅れはあったものの期待通りの成果に達した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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http://www-fps.nifs.ac.jp/ito/