研究課題/領域番号 |
23710146
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
西迫 貴志 東京工業大学, 精密工学研究所, 助教 (10431983)
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キーワード | ナノバイオ / マイクロ・ナノデバイス / 脂質 / 流体工学 |
研究概要 |
脂質二分子膜を隔てた物質輸送の計測はさまざまな病気のメカニズムの解明や創薬において重要とされているが,そうした計測をハイスループットに行える汎用的手法は未だ確立されていない.そこで本研究では,マイクロ流路を用いた微小液滴生成法を利用し,マイクロ流路内で多数の脂質単分子膜を互いに接触させることで,多数の脂質二分子膜をハイスループットに作製できる装置を開発する.さらに,作製した脂質二分子膜を隔てた物質透過を,電気的あるいは光学的にハイスループットに計測できる装置を開発する.以上を踏まえ,平成24年度は以下の研究を実施した. (1)ハイスループット計測のための条件検討:マイクロ流路内にて数ナノリットルサイズの水滴間に脂質二分子平面膜の並列構造を形成し,これらを介した物質移動の光学計測のハイスループット化のための諸条件の検討を行った.先ず,流路内で静止した脂質平面膜に対して行う計測と,流路内で二分子平面膜を緩やかに流動させた状態での計測(シーケンシャル処理)の試験を行った.さらに,油水界面への脂質単分子膜形成,および液滴間への脂質二分子平面膜の形成と安定化に要する時間の短縮化を目的とし,脂質分子の種類と濃度,液滴生成速度,液滴静置時間等の諸条件の検討を行った. (2) 取り扱い対象の膜蛋白質および輸送物質の拡張:前年度に用いたα-hemolysinに加えて,Magainin2, VDAC等のチャネル形成物質の使用し,蛍光分子カルセインの膜を介した輸送観察を試みた.また,脂質二分子膜への膜蛋白質の組込手法としてリポソームを用いた膜融合法を利用するため,水相にリポソーム(~200 nm)水溶液を用い,液滴間に脂質二分子膜を製作できるか試験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度,光学顕微測定による脂質膜の分子透過性評価試験を優先的に行い想定より時間を要したため,予定していた電気測定のためのAg/AgCl微細平面電極組込型マイクロ流路デバイスの製作と評価に遅延が生じた.あらためて次年度に脂質膜のマイクロ流路内電気測定のための装置開発を東京工業大学精密工学研究所にて行うために,必要な費用を次年度に持ち越すことを目的とし,補助事業期間の平成25年度への延長を希望した.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は以下の研究を行う. (1)マイクロ流路とAg/AgCl微細平面電極の複合化: Ag/AgCl微細平面電極を組み合わせたマイクロ流路デバイスを製作する.Ag/AgCl微細平面電極パターンは,ガラスあるいはシリコン基板に塗布したレジストのフォトリソグラフィ,Agのスパッタリング,次いでリフトオフによって製作する.作製した電極基板の上に,別途作製したポリマー製(PMMA, PDMS)マイクロ流路を貼り合わせて使用する. (2)マイクロ流路内の微細平面電極を用いた脂質二分子平面膜の電気計測: 上記で製作した装置を用い,マイクロ流路内に作製された液滴間脂質膜の電気計測を行う.先ず脂質膜の静電容量測定を行い,膜厚の評価を行う.さらに,脂質膜への各種チャネル(gramicidin, α-hemolysin等)の配置を行い,電気応答の確認を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に予定していたAg/AgCl微細平面電極の作製等を,研究期間延長を希望して翌年度に持ち越したことを受け,スパッタリング用Agターゲットや流路作製用の材料費など,各種消耗品の購入費用が平成25年度に持ち越しとなった.したがって平成25年度は,これらの費用を含めた請求額を順次,主に物品費,旅費に使用することを予定している.
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