研究概要 |
脂質二分子膜を隔てた物質輸送の計測はさまざまな病気のメカニズムの解明や創薬において重要とされているが,そうした計測をハイスループットに行える汎用的手法は未だ確立されていない.そこで本研究では,マイクロ流路を用いた微小液滴生成法を利用し,マイクロ流路内で多数の脂質単分子膜を互いに接触させることで,多数の脂質二分子膜をハイスループットに作製できる装置の開発を目的とした.さらに,作製した脂質二分子膜を隔てた物質透過を,電気的あるいは光学的にハイスループットに計測できる装置の開発を目的とした.以上を踏まえ,平成25年度は以下の研究を実施した. (1)マイクロ流路とAg/AgCl微細平面電極の複合化:Ag/AgCl微細平面電極を組み合わせたマイクロ流路デバイスを製作した.Ag/AgCl微細平面電極パターンは,ガラス基板に塗布したレジストのフォトリソグラフィ,Agのスパッタリング,次いでリフトオフによってAg微細電極を作製した後,基板を塩素系薬液に浸漬することにより作製した.作製した電極基板の上に,別途作製したPDMS製またはアクリル製流路を貼り合わせて使用した. (2)マイクロ流路内の微細平面電極を用いた脂質二分子平面膜の電気計測:上記で製作した装置を用い,マイクロ流路内に作製された液滴間脂質膜の電気計測を行った.先ず脂質膜の静電容量測定を行い,単位膜面積あたりの静電容量の値を文献値と比較することにより,二分子膜形成の確認を行った.さらに,脂質膜への各種チャネル(gramicidin, α-hemolysin等)の配置を行い,電気応答の確認を行った.
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