本研究では、細胞サイズの巨大リポソームを単一に囲い込み、その膜ダイナミクス変化と膜界面反応とを同時測定可能なマイクロデバイスを開発することで、膜ダイナミクス変化が膜界面反応にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的としている。膜ダイナミクス変化によって影響を受けることが明らかとなれば、メンブレノームにおける生体膜の潜在的機能を証明することとなり、これは生命現象の本質の一部を提示することとなる。また同時にメンブレン・ストレスバイオテクノロジーにおける、生体膜の潜在的機能による材料設計や物質生産、変換プロセスの、新たな可能性を切り拓く研究となりうる。 申請者は、Micro Electro Mechanical System (MEMS)技術によるマイクロデバイスを用いることで膜ダイナミクス変化と膜界面反応との同時測定が可能になると考え研究を遂行している。平成24年度の計画では、膜構造変化による触媒活性の評価と高効率触媒活性条件の検討を実施する予定であったが、マイクロデバイスの開発についての検討を引き続き行った。 マイクロデバイスの開発は、平成23年度実施の研究においてスクリーンプリント法ではデバイス上に電極を作製することができなかったため、マスキング蒸着による電極の作製に変更した。平成24年度はマスキング蒸着によって作製されるマイクロデバイス電極の最適化を主に行った。蒸着する金薄膜の厚みやマスキング除去の方法、条件等を検討した。中でもマスキング除去は、マスクパターンが10μmオーダーの微細構造であることからパターンの欠損が問題となった。これについてはマスキング膜除去の際、超音波処理することで問題を解決し、パターンに欠損のない電極が作製可能となった。また、この電極を用いてフェリシアン化カリウムの酸化還元反応をサイクリックボルタンメトリー(CV)で測定可能であることを確認した。
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