研究概要 |
本研究では、酵素とカチオン性ポリマーであるポリリジンの複合体を分子間架橋することによりマイクロチャネル表面に酵素を固定化する独自の技術を応用し、長時間・繰り返し再利用が可能なラッカーゼ固定化マイクロリアクターを開発行うとともに、高分子合成に応用した。最終年度は研究計画に基づき、初年度に作製したラッカーゼ固定化マイクロリアクターを用いた高分子合成を行った。合成高分子の数平均分子量および分子量分布は、反応温度に依存すると考えられたため、先ず、マイクロリアクターの熱安定性を評価した。しかしながら、溶液状態の酵素よりも熱安定性が低下した。これは、酵素固定化時に用いた還元反応がラッカーゼの活性中心に存在する銅イオンへ影響したためと考えられた。そこで、還元反応を行わない条件で再度ラッカーゼ固定化マイクロリアクターを作製した。その結果、ラッカーゼ固定化マイクロリアクターは架橋反応による失活は見られず、酵素活性を保持していた。また、溶液状態の酵素よりも優れた熱安定性を示した。このマイクロリアクターをポリアクリルアミドの合成へ利用した。ラジカル分子は2, 4-pentandioneを基質として調製し、モノマー分子にはアクリルアミドを用いた。その結果、目的物であるポリアクリルアミドの生成を確認した。また、モノマー分子の流入速度、反応温度、重合反応部のチューブの長さと内径を調節することにより、合成高分子の数平均分子量および分子量分布が制御可能であることを見出した。
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