研究課題/領域番号 |
23710154
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研究機関 | (財)神奈川科学技術アカデミー |
研究代表者 |
大崎 寿久 (財)神奈川科学技術アカデミー, バイオマイクロシステムプロジェクト, 研究員 (50533650)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / 脂質 / 生体材料(リポソーム) / 人工細胞膜 / マイクロアレイ |
研究概要 |
本研究では、最も簡便かつ汎用的な静置水和法を用いて均一サイズの単層膜ジャイアントリポソームアレイの形成技術の確立を目的としている。平成23年度は、単純な脂質構成において均一サイズの単層膜リポソームを形成・アレイ化することを目的とした。均一サイズのリポソームを形成するため、微細な導電/絶縁パターニングを基板に施し、エレクトロスプレー法を用いてその導電性部分のみに脂質を選択的に塗布する手法を開発した。まず、脂質構成を代表的なリン脂質系として、脂質の選択的塗布のための基板構造・エレクトロスプレーの詳細な条件検討を行った。脂質塗布表面の観察を行い、リポソーム形成の再現性との関連を調べることで、目的とする均一サイズリポソームの形成に必要な条件を明らかにすることができた。再現性の非常に高い基盤技術を確立できたと言える。基板の円形の導電性パターンの大きさによって形成されるリポソームサイズを制御できることも明らかとなった。また、蛍光ラベル化された脂質分子を混合してリポソームを形成し、輝度を測定した結果から、形成されたリポソームについて単層膜あるいはそれに近い状態であると確認できている。生化学実験への応用を考えた際に重要となる水溶液中の電解質濃度影響についても検討を行った。電解質溶液下での静置水和法によるリポソーム形成は従来難しいとされるが、本法でも標準的な方法では困難であった。しかしながら、基板にアガロース薄膜をコーティングすることでこれを解決できることが明らかとなり、検討を進めている。選択的脂質塗布法による均一サイズリポソームアレイの形成技術は再現性が高く、応用実験が容易であったため、次年度に予定していたリポソーム回収・混合脂質系への拡張についても着手した。リポソームは高い柔軟性と内水相の影響でハンドリングは難しい。そこでDEPピンセットと呼ばれる誘電泳動を利用した手法を開発している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の目標であった「均一サイズリポソームアレイ形成の基盤技術確立」については、高い再現性を持った技術を確立することができた。今年度の検討課題の中で最も難しい電解質の影響については次年度にも検討すべき点が残されてはいるが、糸口はつかんでおり条件を精査することで解決が可能である。その上で、次年度に予定していた研究課題にも着手し、一定の成果が得られていることから、計画以上の進展と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績概要の通り、今年度の目的の基盤技術部分の確立が早い段階で終了できたため、応用実験へ移行している。次年度は、残された研究課題である電解質の影響・リポソームの回収・混合脂質系の使用について検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の研究進展により、次年度の実験として蛍光観察が頻回に発生すると考えられたため、初年度における消耗品費を極力抑制し、20万円を次年度に繰り越した。これは、次年度の予定額が120万円であり、蛍光観察ユニットの購入と消耗品費・成果発表費の両立が困難と判断したためである。次年度初期に上記の蛍光観察ユニットの購入を行う。また、繰越金をあわせて、消耗品費および成果発表費の執行を行う。
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