前年度の理論計算の結果より、3種類の積層量子ドットサンプルを検証した。1番目は、上下の量子ドット間隔が15nm、2番目は上下の量子ドット間隔6.5nm、三番目は量子ドット間隔3.5nmである。それぞれ積総数は30層である。1、量子ドット間隔15nmと3.5nmにおいて、励起準位(PLE)測定を行った。量子ドット間隔15nmのPLEスペクトルでは、エネルギー差が約55meV付近において、明瞭な第1励起準位が認められた。他方、量子ドット間隔3.5nmの場合では、明瞭な励起準位ピークは観測されなかった。この結果からも 量子ドット間隔3.5nmではサブバンド準位が形成されている傾向を観測した。2、また、量子ドット間隔15nmと3.5nmにおいて発光寿命測定も行った。量子ドット間隔15nmと3.5nm両方において速い緩和機構と遅い緩和機構の2種類の緩和過程が存在することを明らかにした。特に遅い緩和機構について注目した。量子ドット間隔15nmの場合の発光寿命は、8.95ns。量子ドット間隔3.5nmの場合での発光寿命は、6.7nsと若干早い傾向を示した。3、理論と検証実験より、量子ドット間隔が10nm以下の領域では、サブバンド準位が形成されている様子を明らかにした。この結果を基に、量子ドットレーザとして応用させるために最も重要な要素となる半導体量子ドット材料の光増幅率測定を行った。(1)ドット間隔15nmの光増幅率=0.033cm-1、(2)ドット間隔7.5nmの光増幅率=0.011cm-1、(3)ドット間隔3nmの光増幅率=0.045cm-1であった。確実にサブバンド準位が形成されているドット間隔3では0.045cm-1となり光増幅率の上昇がみられたが予想より増幅率の増加は少なかった。この原因究明を今後の課題とする。さらにこの技術を高効率太陽電池の分野にも応用していきたい。
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