本研究は,「離散的制約を考慮した道路ネットワーク設計問題に対する最適化アルゴリズムの開発」を目的とするものである.道路ネットワークにおいては交通渋滞がつきものだが,これは時間的・経済的損失をもたらすのみならず,環境にも大きな悪影響を及ぼす.渋滞の改善策の一つとして,道路の新規敷設や拡幅工事が考えられるが,バイパス開通後に逆に渋滞がひどくなる事例のように,真に最適な道路ネットワークの設計は非常に難しい問題である. この問題の解決には様々なアプローチが考えられるが,その一つに数理最適化を利用する手法がある.しかしながら,これまで数理最適化による交通流の研究においては,連続最適化の手法が主に用いられ,道路の新規敷設や拡幅などの,離散的制約をうまく扱うことができていなかった.また,交通渋滞は交通量に対して非線形な現象であるが,非線形性も数理最適化と相性が悪い原因の一つとなっていた. 研究の最終年度にあたる今年度では,昨年度に開発した「時空間ネットワークを利用した,渋滞を最小にする周辺路線の鉄道ダイヤの最適化」を行うアルゴリズムを洗練し,計算機実験を行った.その結果として,鉄道ダイヤの過密化と渋滞減少のトレードオフに関する解析が可能となり,この研究成果について,国際会議で発表を行った.また,前年度から引き続き行っている,非単調性を含むコスト関数が設定されているネットワーク設計問題の一種に対して,研究成果を総合的にまとめ,論文を投稿した. 研究期間全体を通した成果として,従来は数理最適化の技術で扱うことの難しかった「渋滞解消のためのネットワーク設計問題」に対し,同手法を応用した複数のアルゴリズムを開発することに成功した.また,渋滞解消のため鉄道ダイヤも同時に最適化するという手法まで拡張を行うことが可能になった.
|