1. ロバストポートフォリオ最適化モデルの開発:はじめに、前年度に引き続き、平均分散モデルの解とモデルパラメータの関係についての研究を行った。前年度は平均分散モデルを利用する際に、平均ベクトルと分散共分散行列を実データから推定した場合に得られる解の性質を解析したが、本年度はこれをさらに精緻化した。また、数値実験によって、得られた理論的結果の検証を行った。日本の公的年金で用いられている平均分散モデルのメカニズムを把握することは重要であり、本研究の結果は意義あるものであると考えている。 2. 線形計画問題に対する内点法の性質の解析:前年度に予測子-修正子内点法の理論的反復回数が、適当な仮定の下で目的関数ベクトルによらない多項式オーダーであることを証明したが、本年度では証明の検討・整理を行った。得られた結果はこれまでに知られておらず、それを足がかりにさらなる研究の進展が期待され、意義は大きいと考えている。 *3. LP‐ニュートン法の開発:LP‐ニュートン法は線形計画問題に対する新しい発想に基づくアルゴリズムである。このアルゴリズムは理論的に優れた性質を持つことが期待されている。LP‐ニュートン法は特殊な入力形式の問題しか解くことができなかったが、本研究では一般的な線形計画問題を扱えるようにアルゴリズムを改良した。このように、これまでに研究があまり行われていないアルゴリズムにおいて新しい結果を得ることができた。 *4. 線形計画問題に対する単体法が生成する基底解の個数の上界について:前年度から標題の研究課題を継続し、これまでに得られた結果を整理した。本研究の進展により、線形計画法の理論に新たな視点を与えることができた。 *3、4の研究は、当初予定したものではないが、超大規模多期間計画問題に対する効率的アルゴリズムの開発との関連から基礎研究として行った。
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