研究課題/領域番号 |
23710165
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
市川 学 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (60553873)
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キーワード | 都市シミュレーション / 都市モデル / エージェントベース / SOARS |
研究概要 |
本研究では、都市で起こりうる社会現象を再現する仮想都市モデルを構築するための環境の提供を目指す。従来では再現が難しかった、人間の生活空間と現実世界の位置情報の両方が反映された仮想都市の構築方法を提案し、実際に仮想都市を構築できるシステムの開発を行い、提供することを目指している。その中で、本年度の実施計画では、昨年度に達成した階層型の仮想都市の構築法を応用し、生活空間考慮型の仮想都市の構築法を整理することを目標とした。 生活空間考慮型の仮想都市構築法では、政府統計の総合窓口(http://www.e-stat.go.jp/)において公開されている地理情報システム(GIS)のデータを利用することで、仮想都市を構築される。ここで構築された仮想都市は、市町村階層を基盤に、町丁字階層・生活空間階層から構成される空間構造を持つ。なお、この環境は社会シミュレーション言語SOARSの標準ツールとして採用された。 なお、本年度では、本研究で提案する仮想都市構築法の有用性を検証するために、昨年度利用した、架空感染症が拡大する社会現象を想定したシミュレーション結果において、個々のエージェントの振る舞いの違いを分析した。今年度は、昨年度とちがい、モデルの全体的な振る舞いの分析の他に、個々の意思決定主体であるエージェントの振る舞いの違いを分析することで、仮想都市構築法の違いによって、表現した社会現象が全く別の性質を持つ可能性が存在することを示した。さらに、社会現象に対する政策の効果も、仮想都市の構築法によって善し悪しが異なり、想定する政策を正しく評価できなくなる恐れがあることを示唆した。来年度以降、仮想都市内の移動手段の扱い方について検討を重ねるとともに、政府統計の総合窓口で公開されている情報より、半自動的に仮想都市モデルを構築できる環境作りを行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、都市で起こりうる社会現象を再現する仮想都市モデルを構築するための環境の提供を目指す。従来では再現が難しかった、人間の生活空間と現実世界の位置情報の両方が反映された仮想都市の構築方法を提案し、実際に仮想都市を構築できるシステムの開発を行い提供することである。「人間の生活空間における活動に重点の置かれた社会現象を再現することが可能で地図情報が反映された仮想都市を構築するための環境を提供する」ことを目標としている。その中で、4年間の研究計画は、1年目:ネットワーク構造と行政区画を利用した仮想都市構築法に関する研究、2年目:統計情報から仮想都市を自動構築するシステムに関する研究、3年目:大規模都市シミュレーションを可能にする分散システムに関する研究、4年目:各領域研究者と協力したモデル構築に関する研究、と設定している。 そのような中で、1年目は、従来の標準手法であったセル型仮想都市構築法と、本研究で提案する階層型の仮想都市構築法で構築された仮想都市に社会現象を再現し、シミュレーションの結果の差異を比較を行った。今年度は、このシミュレーション結果について、モデル全体だけでなく、個々の意思決定主体であるエージェントそれぞれに行うマイクロ分析を行うことによって、仮想都市構築法の違いが、モデルで表現する社会現象の性質やその社会現象に対する政策の評価へ影響することを中心に研究を行った。そのため、計画時に予定していた「統計情報から仮想都市を自動構築するシステムに関する研究」については、システムの構築までに至らなかった。しかし、これまでのモデル構築の経過上、システムに必要となる情報収集は完了しているので、次年度の早い段階でシステム構築のメドは経つものとし、おおむね順調に進展していると判断した。なお、ネットワーク構造については、移動手段を考慮するという新しい課題を見据えることとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の当初の研究の推進方策で残されている課題は、1)統計情報から仮想都市を自動構築するシステムに関する研究、2)大規模都市シミュレーションを可能にする分散システムに関する研究、3)各領域研究者と協力したモデル構築に関する研究、3つに分類される。そのうち次年度に予定する研究内容は、「統計情報から仮想都市を自動構築するシステムに関する研究」である。また、同時に大規模都市シミュレーションを可能にする分散システムに関する研究を平行して行い、今年度終わりに1)および2)の内容を完了させる予定でいる。なお、各領域研究者との協力したモデル作りは、今年度より行っており、これまでに得られた成果を公表する予定でいる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたのは、研究備品の購入費用が予想より低かったこと、また予定していた国際会議が国内開催であったことなどが挙げられる。次年度は、本研究の中間発表を国内会議および国際会議で報告をする予定である。次年度使用額と合わせ、研究内容を発表する機会を増やす予定でいる。また、研究遂行に必要な計算機の補填・補強および統計情報の整理上、必要となる人件費を支出する予定である。
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