本研究では、都市で起こりうる社会現象を再現する仮想都市モデルを構築するための環境提供を目指す。従来では再現が難しかった、人間の生活空間と現実世界の位置情報の両方が反映された仮想都市の構築法を提案し、実際に仮想都市を構築できるシステムの開発を行い、提供することを目指している。本年度は、統計情報から仮想都市を構築するシステムにおいて、新たに年齢構成の要素を加えた。また、仮想都市構築システムを実利用した感染症シミュレーション研究を行い、同時にシステムが適用可能な研究領域の模索を行なった。 統計情報から仮想都市を自動構築するシステムにおいては、統計情報から得ることができる世帯構成(親・父・母・子供の構成)と、夫婦間の年齢差、親と子供の年齢差を考慮する推計アルゴリズムを導入することで、町丁単位で世帯と年齢の情報が反映された仮想都市構築用の都市情報生成システムを構築した。ここで得られた都市情報は、感染症シミュレーションモデルにおける仮想都市構築のために利用され、都市シミュレーション研究における利用を行なった。 感染症シミュレーションモデルにおいては、約8000人の離島を仮想都市構築システムを利用して、国勢調査の統計情報に沿った仮想都市モデルを構築し、その仮想都市上で季節性のインフルエンザの流行を表現を行なった。世帯構成および年齢構成が反映されていることで、性別や年齢区分を考慮した流行蔓延の分析を可能にした。 そのほか、公衆衛生における地域医療連携体制の検討、震災復興過程における労働市場の需要と供給政策の検討、特定地域における損失余命計算システムの構築、転居を考慮した人口動態シミュレーションと、都市に関わる幅広い分野において、仮想都市モデルの有効活用性を確認し、本研究における仮想都市構築システムの特徴を踏まえて、これらの領域におけるモデル構築を開始した。
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