研究概要 |
本研究では,周期制約のある組合せ最適化問題を効果的に扱う手法としてアントコロニー最適化法(ACO)による手法を開発し,旅客鉄道の車両運用問題への適用を行った.本年度では主に,複雑な運用形態である車両の連結・分割を含む運用問題に対応した手法の拡張を行った. (1)前年度で開発したACO+局所探索法では,大規模問題において検査箇所を多く含む解が生成され,検査実施が特定時間帯に集中する問題が見られた.そこでACOの解構築プロセスの周期選択に,時間帯を複数に分割し,その一つをランダム選択する改良を加えた.時間帯分散の効果は見られたが,過剰検査の削減では有意な効果は得られなかった.現在,回送コストの改悪を許容する削減法を検討している.前年度も含めた成果は学術雑誌への投稿を予定している. (2)複雑な路線では,両数の異なる車両を単独あるいは複数連結して輸送量調整を行っている.拡張手法では,各列車の編成組成(例えば3+4両,3+3+3両等)を両数タイプ別に分けて考えることで両数タイプ毎の運用計画問題に分離し,また同一タイプを複数使用している列車編成も同時刻・同駅間を走る複数の列車と見なすことで前年度開発した基本ACOを適用するアプローチを取った.さらに連結・分割運用では(A)同じ列車編成に組成されている車両の頻繁な分離結合の回避,(B)連結車両同士の検査は同じタイミングでの実施が好ましい,の考慮が必要となる.拡張手法では,列車本数の増加,検査設定箇所の偏在等の理由により検査制約を満たす解の生成が困難となった.そのため周期制約を満足しやすくするためA,Bの条件を緩和してACOを適用した.小規模問題に対しては良好な結果が得られたが,中規模以上については,3~5日の短周期での実行可能解の生成が困難であった.現在,局所探索の適用による改善を検討している.成果は日本機械学会年次大会での発表予定である.
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