研究課題/領域番号 |
23710171
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
稲川 敬介 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (50410759)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 救命 / 政策研究 / 都市計画・建築計画 / モデル化 / シミュレーション工学 |
研究概要 |
本研究では,消防広域化による救急車システム合併の効果の分析と運用効率化のための研究について取り組んだ.研究期間初年度の研究実施計画は,研究の主軸となる合併の効果を数値的に測るモデルの構築を進めると共に,実際の救急業務従事者に対するヒアリング調査と救急搬送に関する実データの整理である.これらに関する具体的な取り組みと活動を以下にまとめる.1.地元消防本部に出向き,救急業務合併の現状に対するヒアリング調査をおこなった.また,救急搬送を受け入れる側である病院へのヒアリング調査もおこない,救急業務の合併と医療圏の問題についても深い議論をおこなった.一方で,救急搬送に関する実データを提供していただき,地区ごとの対応時間の平均値や救急車の呼出し時間帯など簡単な統計的分析をおこなった.また,住所コードの作成や呼出し時間と対応車両の関連付けなど,実データの電子的データフォーマットを統一するためのデータ整理を始めている.救急業務全般に関する効率化については研究会(KSMAP合宿,琵琶湖カンファレンスセンター)で口頭発表し,論文(配置問題からみる救急車システムの効率化,経営システム)としてもまとめている.2.合併の効果を数値化するモデルについては,待ち行列理論を応用したシミュレーションモデルを構築し,基本的なモデリングをおこなった.このモデルでは,まず,救急システムの運用の効率性を評価することができるよう構築をおこなった.モデルの内容については,研究会(第231回待ち行列研究部会,京都大学 東京オフィス)で口頭発表し,運用の効率性について論文(ACMSA2011,Sanya China)として発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の計画に予定していたヒアリング調査は,地元消防本部に対して予定通りおこなうことができた.また,救急搬送に関する実際のデータ提供にも協力していただき,順調に研究体制を整えている.さらに,計画にはなかったが,救急搬送を受け入れる側である病院に対するヒアリングもおこなうことができた.ここでは,救急業務の合併と医療圏の問題についても深い議論を交わし,現状に対する調査と今後の研究課題についても考察をおこなった.また,平成23年度の計画に予定していた基本モデルの構築はほぼ予定通り完了し,救急車システムの効率性について評価することが可能である.次年度以降では,このモデルを応用して,1つの救急車システムだけではなく,複数の救急車システムとそれを合併した場合についての評価を可能にする.これらの状況を踏まえ,計画以上に進んだ点もあるが,おおむね計画通りであると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の主な計画は,救急データの整理と分析,消防本部の合併に関する現状調査と考察,評価モデルの構築と基本モデルの応用による簡単な数値実験の試行である.救急データの整理と分析については,既に一部始めている.ただし,住所の統一的な表記法など地理情報における問題が難航している.ここについては,専門知識を有する研究者からの情報提供を受けながら研究を進める.また,消防の広域化は平成24年までを目途に実現される予定である.そこで,消防本部との連絡をとり,合併のプロセスについて公表可能な範囲については,考察をまとめて発表する.ただし,前年の調査により,公表可能な情報は限られていることがわかっている.公表可能な情報が少ない場合においても,今後利用する内部的な資料としてデータ整理とともにまとめておく.また,合併協議の詳細が定まった後に,その内容を反映できるよう既存研究のモデルを修正し,複数の救急車システムを統合可能なモデルを構築する.もし想定していないような指針が定まった場合には,プログラムの改修をおこなう.改修したプログラムを利用して合併状況を反映するような数値実験をおこなう.基本モデルについては,全年度から継続して構築しているので,平成24年度は簡単な数値実験をおこない,国際会議などで発表する.国際会議は,ISORA XII(名古屋・京都にて開催予定) を予定している.評価モデル本体についても構築を始める.最終年度,実質的に使用するプログラムの開発をはじめ,できるかぎりサンプル問題を解決するところまでを研究計画2年度目の目標とする.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画初年度において,既に計算機などの必要機器を購入しているため,研究計画2年目の主な研究費の使用は学会発表等に関わる費用となる.学会については,国内の研究会(都市のOR),国際学会(ISOLDE XII)を予定している.予定していた学会に変更があったとしても,国内1件,国外1件の発表を目標とする.また,学会以外にも,初年度に問題として出てきた地理情報の取り扱いについて,専門知識を有する研究者とのミーティングも複数回予定する.これらの直接的な旅費以外には,学会参加費など学会・研究会発表に関わる費用を予定している.また,救急データの整理や評価モデルのコーディングに必要なファイルやCD・DVDなどの消耗品の購入も予定している.
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