本研究では,消防広域化による救急車システム合併の効果の分析と運用効率化のための研究について取り組んだ.研究期間最終年度のおおまかな研究実施計画は,分析をおこなってきた救急データのまとめと報告,そして救急車システムの合併の数値実験のまとめと報告である. 1.これまでに地元消防本部の協力により5年分の提供していただいた実データの分析結果と,実際の合併協議についてのヒアリング調査の結果をまとめ公表可能な部分について,南山大学 基盤研究(A)「都市内の災害時の流動に関する総合的研究-効率性と頑健性を備えた都市実現に向けて-」第1回研究会と,横浜国立大学近経研究会にて口頭発表した.これらの発表では,救急車システム自体の構造と共に,平成の大合併を経た地方都市では,旧市町村の縛りを受け,救急自動車(以後,救急車)の台数・配置などが合併を経ていない自治体の状況とは異なる状況にあることや,自治体内における地域差が大きく,さまざまな問題点があることについても発表した. 2.救急車システムの合併の数値実験では,合併予定があった市を独立に評価し,その後,合併を仮定してシミュレーション実験をおこなった.この実験により,市という境界を取り払うことにより,平均対応時間(救急車を呼んでから現場に到着するまでの平均時間,現着時間)が改善されることを確認した.その効果は,最短移動時間が変更された地域のみならず,システム効率性の改善により広い地域に波及する事もわかったが,全体で平均すると5%程度であることも確認できた.これらの結果を論文「Effect of Merger with Neighboring Local Ambulance Systems」としてまとめ,Asian Association of Management Science and Applications (AAMSA) にて発表した.
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