研究課題/領域番号 |
23710182
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
山田 哲男 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (90334581)
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キーワード | 製品ライフサイクルマネジメント / 循環型サプライチェーン / シミュレーション / 可視化 / 環境対応 / 経営工学 |
研究概要 |
本研究では、リユース・リサイクルによる製品の資源循環すなわちモノの流れに着目し、組立・分解による製品/素材の価値・利益の創出と、物流のエネルギー消費で排出してしまう配送・回収のCO2量の削減を同時に目指して、生産・物流の経済性および環境負荷の見える化と評価を行う。本年度の主な研究成果は以下である。 1.回収される使用済み製品について、リサイクル率を維持しながら利益を最大化するように、部品ごとに分解あるいは廃棄を決める最適な部品選択法を提案した。さらに、選択される部品の分解作業が分解ラインの作業編成に影響することに着目し、その部品選択のもとで最適な作業編成を行う分解システム設計法を手順化した。この成果の一部は、国際会議APIEMS2012における研究協力者の発表論文で、Best Student Paper Awardを受賞した。 2.使用済み製品のリサイクルを行う素材仕分け分解システムについて、素材の流れを待ち行列のシミュレーションや数値解析によってモデル化した。また、具体的な製品CADモデルの例を適用したシミュレーション実験を行って、製品の部品・素材構成がシステムの直行率や素材回収率に与える影響を分析した。 3.これまでに整理してきた環境に調和しかつ経済的なサプライチェーン設計の課題解決へ向けて、製品の環境負荷測定法、生産・物流システムの経済性評価・最適設計を組み合わせて体系化する設計アプローチを提案した。また、循環型と低炭素型の統合的なサプライチェーン設計の必要性と課題について議論した。 研究成果の一部は、国際会議・国内学会での研究発表のほか、国際セミナーや企業向け研究会での招待講演・論文や、洋書と和書の執筆を行って普及に努めた。また、新興国や先進国の研究拠点を訪問し、講演や研究者らと意見交換を行い、サプライチェーンや環境対応の現地最新事情を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度までの主な成果によって、循環型サプライチェーンで使用済み製品を再生する分解生産システムの設計に関し、分解部品選択、分解作業編成と仕分けシステムの3段階を対象にし、環境に調和しかつ経済的な設計法をそれぞれで確立したと考えられるためである。 また、サプライチェーンと環境対応のグローバルな実地調査によって、先進国(ドイツ、イギリス、米国)のみならず、新興国(インドネシア、ベトナム、タイ)でも講演や工場見学、研究者・企業家との意見交換を行って、海外研究拠点とのネットワーキングを形成できたためである。こうして得られる、あるいは今後も引き続き得られる現地事情は、すでにグローバル化しているサプライチェーンをモデルに反映させるためには不可欠であり、現地事情の入手見通しが立ったと考えられる。 以上より、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、物流システム(配送・回収)のモデル化、循環型のリサイクル率と低炭素型のCO2排出量の同時評価と、これまで開発してきた分解システム設計法間の統合が挙げられる。 物流システムのモデル化については、新興国では陸上輸送におけるリードタイムの不確実性、先進国では災害やテロなど有事の際のリスク考慮なども考えられる。循環型のリサイクル率と低炭素型のCO2排出量の同時評価では、使用済み製品の分解部品選択において、環境負荷をリサイクル率のみならずCO2排出量でも評価し、利益向上と両立する点がないか検討する。分解システム設計法間の統合では、分解部品選択、分解作業編成と仕分けシステムの3段階について、1つの設計手順として統合する方法について検討する。 また、当初計画よりも物流・生産システムのモデル化で研究成果の進展があったため、平成26年度に実施予定であった新興国や先進国での生産・物流システムに関わる実地調査を平成25年度中に前倒して実施し、入手した現地情報を開発したモデルに反映させる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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