研究課題/領域番号 |
23710184
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐野 雅隆 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (50580221)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 医療安全 / 与薬事故 |
研究概要 |
本研究では,下記の3つの方法を検討することとしていた.(1)各病院での事故内容の比較方法,(2)事故件数の基準化方法,(3)業務システムの評価方法である.特に平成23年度は,(1)の方法を開発するべく研究を進めた.具体的には,各病院における与薬業務を作業要素に分解して記述し,発生した事故を比較することを可能にすることである.上記の研究課題を達成するために,診療科間,病院間の与薬業務の違いを把握可能にすることをねらいとして,与薬業務を25の作業要素に分解した.さらに,作業要素における作業方法を記述するための構成因子を6つ挙げ,作業要素ごとにこれらの6つの構成因子を把握することで,各作業要素における作業方法を記述した.これらの分析を各病院の業務について行った上で,課題ごとに以下の調査,分析をすすめた.まず,過去に実施した与薬事故に対する対策を調査し,作業要素のどの段階のものかを明確にした.次に,把握した作業要素について,対策前後1年ぐらいが比較できるようにインシデントレポートを調査し,どのような内容の事故が起きているかを把握した.本研究では,事故の内容は与薬事故のエラーモードを把握し,該当する作業要素と対応づける.さらに,対策ごとに関連するエラーモードが抑えられているかどうかを調査した.また,エラーモードを抑えられる対策かどうかを論理的に検討した結果,エラーモードの発生抑制には一定の効果がある作業変更に関する対策であることが分かった..以上の分析をもとに,対策前後での事故内容の変化が作業要素とエラーモードによって記述できることについて,考察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の重点課題であった,診療科間,病院間の与薬業務の違いを把握可能にすることをねらいとして,与薬業務を25の作業要素に分解した.さらに,作業要素における作業方法を記述するための構成因子を6つ挙げ,作業要素ごとにこれらの6つの構成因子を把握することで,各作業要素における作業方法を記述した.これらの分析を各病院の業務について行った上で,課題ごとに以下の調査,分析をすすめた.具体的には,まず,過去に実施した与薬事故に対する対策を調査し,作業要素のどの段階のものかを明確にした.次に,把握した作業要素について,対策前後1年ぐらいが比較できるようにインシデントレポートを調査し,どのような内容の事故が起きているかを把握した.作業要素を具体的に把握することにより,次年度以降の研究に向けた基盤づくりが進んでいるため,順調に進展していると考えており,今後も継続的に共同研究先との打ち合わせを重ねながら,今後の研究計画を着実に推進させていく.
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今後の研究の推進方策 |
作業要素とエラーモードの把握によって,事故の内容を比較し,各病院で発生しているさまざまな事故の共通点を明らかにする.さらに,同様の事故を集計することによって,事故が多数報告されている病院とそうでない病院とを層別する.異なる病院で事故件数を単純に比較することは困難であり,病院の規模や病床利用率などを把握することによって,与薬の全体の回数を推定する.全体の回数を明らかにした後に,各病院で発生する与薬事故率を算出し,多寡を比較・検討することが今年度の大きな課題である.事故件数の基準化方法としては,3病院のインシデントレポートから,作業要素ごとに発生件数を把握する.発生件数に違いがある作業要素について,作業方法の違いを明確にし,発生件数が多い作業方法に対する対策を実施する.次に,対策案の効果を把握し,作業方法の病院間比較によって発生率を低減できるかを検証する.発生率を算出する際には,病床数,病床利用率,在院日数などでの基準化を行い,同一病院内および病院間による事故発生率の多寡を検討する.および,対策前後での発生率の変化等を把握する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は,協力病院を研究者が訪問して,事故の収集,分析の実施,医療憤然活動実施の支援,それらの効果・問題点の把握,医療者との議論などを行う.実証のために現実に活動が行われている現場の状況を詳細に把握するために必要である.研究者,医療者の移動が活発に行われるので,旅費を主要な経費として計上している.また,国内学会である品質管理学会にて発表を行い,国内の研究者との意見交換をするために成果発表旅費を計上している.事故防止教育の際のファシリテータ,膨大な記録データの分析などは,専門知識を持った大学院生,研究員等の協力が不可欠である.したがって,謝金も経費として計上しており,継続的に協力を依頼する予定である.共同研究先の病院の中には,旅費の負担が大きくなる病院もあるが,事故防止活動で先進的な病院であり,これらの病院で先駆的な事例を作ることは意義が大きく,本研究の対象として最適であるが故に選んでおり,昨年と同程度の旅費が発生すると考えている.外国旅費は,医療の質関連のセッションが設定される国際学会であるAsian Quality Symposium,QMOD conference on Quality and Service Sciences,The European Organization for Quality,American Society for Quality,などで研究成果を発表するために計上している.
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