研究概要 |
病院が安全な医療を提供するためには,医療事故発生への対処が重要である.本研究では,与薬事故に着目した.各病院では,独自の作業方法で与薬しており,また場合によっては各作業者によっても作業が異なることがある.すなわち,業務を管理できているとは言いがたい.また,事故報告書を組織横断的に分析しておらず,どの作業方法が安全であるのかを分析できていない.そこで,事故情報を有効に活用するための新しい方法論の開発に向けた研究を行った. その中でも,作業方法を改善して与薬事故を低減するために,発生している与薬事故の傾向を把握することで病院間の比較を可能にする分析手法を提案した.これまでに,(1)各病院での事故内容の比較方法と(2)事故件数の基準化方法を開発してきた. 平成25年度は,前年度の成果に基づき,安全な与薬業務の作業方法を各病院で検討した.その際,個別の業務をとらえる単位を用いて検討を可能にした.事故低減効果の総合的な検証を実施し,与薬業務の医療安全活動の全体を提示した. これまでの研究成果については,Asian Network for Quality, International Conference on Quality and Service Sciencesにて発表し,International Journal of Quality and Service Sciences誌に掲載された.学会発表では,ガイドワードを用いた分析について質問があり,今後の研究実施に向けた知見が得られた. 本研究の意義は,病院における与薬業務の安全な実施に向けた基盤を提供し,それぞれの機関で検討を進める体制を構築できたことがあげられる.新人や既卒者に向けた教育などは,今後の課題である.
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