研究課題
日本では下水道普及率の上昇に伴い、下水道管渠のストックは膨大な量となっており、その総延長は約40万kmに達し、今も増加する状況にある。管渠施設の中には、標準耐用年数50年経過管が約7千km、30年経過管でも約7万kmを占め、管路施設の老朽化や損傷などに起因した道路陥没も増加傾向にある。下水道管の敷設後30年を経過した時点で陥没箇所が急増し、2007年には約4700件の道路陥没事故が発生し、道路交通や市民生活に与えている弊害は大きい。下水道施設が供用開始後社会的インフラシステムとしてその機能を適正に発揮するためには、改築修繕・維持管理するための手法が必要となっており、今は社会基盤施設全般において維持・管理・再生する技術の研究開発が促進されている。しかし施設や設備に対する調査・点検箇所を合理的かつ効率的に選定する方法がなく、しかも社会基盤施設の老朽度や損傷度合を高精度で客観的に判定できる手法もないのが現状である。そこで、本研究では社会的インフラシステムの一つである下水道維持管理計画するために、機械学習理論を用いた管渠の定量的・客観的な老朽度および損傷度合いの評価法および下水道管渠の合理的・効率的な点検調査方法の提案を目的として、前年度は下水道管渠を対象とし、維持管理の実態調査結果をもとに管渠の諸元・調査結果と道路陥没との関連性を把握し、管渠の老朽度・損傷度合の評価法について考察を行った。今年度は老朽度・損傷度合の評価に基づき、点検・調査すべき箇所の選定法を提案し、道路陥没に大きな影響を与えると思われる重要要因を、統計的解析手法や計算知能手法を用いて解析を行った。さらに、大阪市下水道局から提供されたデータを用いて、ケーススタディを行い、提案した維持管理評価手法の有効性および実用性についての検討を行い、これまでの成果をもとに総合的な管渠の維持管理方法を提案した。
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