研究課題/領域番号 |
23710188
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柴山 明寛 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80455451)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 実室内被害把握 / センシング技術 / 家具転倒 |
研究概要 |
本年度は,(1) 汎用PC内蔵のセンサー群とライフログとの重合処理による室内の被害把握方法及び要救助者の有無の判定方法,(2)要救助者の救助のために必要となる情報を明らかにすると伴に,救助側への情報提供方法,の2つについて研究を行った.・室内の什器類の転倒と移動,被災状況の判断:什器類の転倒や移動に関して,ノートPCに内蔵されている加速度センサーを用いて実験を行い,室内の大まかな床の応答加速度を取得することが可能であることがわかった.次に,什器類の転倒防止や移動防止策が施されている場合などは,一概に応答加速度だけでの判断はできない場合があるため,Micrsoft社のKinectの深度センサーを用いて常時観測による差分処理を試み,什器の移動を検知することが可能であることがわかった.・要救助者の有無の判断:要救助者から発した声(例えば,「助けて」)を音声センサーで検知する模擬実験を行い,ある程度環境の良いところでは音声認識が可能であることがわかった.次に.声量が小さく認識が出来ない場合や言葉を発せられないことを想定し,Twitterからのライフログを収集するシステムを開発・実験し,有用性を確認した.・要救助者の救出のための必要情報:東北地方太平洋沖地震の救出活動に従事した仙台市消防局にヒアリングを実施する予定であったが,東日本大震災の対応に仙台市消防局等が忙殺されており,ヒアリングを実施することができなかったため,消防隊員のための教本等から文献調査を行った. 上記の他にシステムへの実装を同時並行で行った.また,上記の実験では,物品購入した性能の違う3台のPCを用いて実験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
センサー群とライフログとの重合処理による室内の被害把握方法及び要救助者の有無の判定方法については,本年度の実験とシステム実装により,おおむね順調に進展していると言える.しかし,「要救助者の救助のために必要となる情報を明らかにすると伴に救助側への情報提供方法」の部分について,東北地方太平洋沖地震の救出活動に従事した仙台市消防局にヒアリングを実施し,当時の災害状況や情報内容について整理を行い,要救助者を検索するために必要な情報を明らかにする予定であったが,東日本大震災の対応に仙台市消防局等が忙殺されており,ヒアリングを実施することができなかった.この部分については遅れているが,次年度早々に実施することで遅れを挽回することは可能と考える.
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今後の研究の推進方策 |
24年度は,本年度に実施した内容について再度精査を行い,方法の更なる発展を目指す.また,(3)要救助者の救助支援を効率化するための共助・公助の連携方法,(4)室内の実被災状況を含めた被災地全域の被災情報の提示方法,2点について研究を行うと伴に,(2)要救助者の救助のために必要となる情報を明らかにすると伴に,救助側への情報提供方法についても合わせて研究を行う.以下に問題点と解決方法を示す.・共助・公助の連携方法:仙台市の自主防災組織及び仙台市消防局に,消防隊員と自主防災組織の連携タイミングや情報提供時期,情報提供内容,消防隊員が不足した際の自主防災組織の対応方法,自主防災組織と消防隊員の役割分担等についてヒアリングを行い,これを基にした共助・公助の連携方法について明らかにする.・被災情報の提示方法:これまでの研究成果を発展させた方法を検討する.例えば,AR(拡張現実)を利用した被災情報の提示方法などである.カメラ付き携帯端末等で要救助者の場所をARで表示することで,地図や文字で把握するより,格段に速く場所の特定が可能である.ARの利用も含めた被災情報の提示方法について,様々な視点から検討する. 上述に示した方法のシステムへの実装状況に応じて,実証実験を実施する.24年度は,テストベットによる実証実験を実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に実施する予定であったヒアリング結果の整理及びそれに伴う東北地方太平洋沖地震の文献整理を予定していたが,上記の理由により研究補助の人件費及び謝金分の執行ができていない.また,予定していたプログラムの修正等が少なかったため,人件費を予定した額より使用しなかった.次年度では,未着手部分について実施するため,研究補助の人件費が必要である.本年度の実装では,汎用PCを中心とした開発を行ったが,次年度は携帯端末への実装を行うと伴に,被災情報の提示方法としてARの開発に着手する.これらの実験と実装のために,テスト用携帯端末の3台及びシステム実装費用が必要となる.また,実験の補助や実験結果を受けたプログラムの修正等で,研究補助の人件費を使用する.次に共助・公助の連携方法の検討のために,様々な自主防災組織にヒアリングを実施するために資料収集の旅費が必要となる.また,国際学会や国内学会に本年度の研究成果の発表を行うための成果発表旅費が必要となる.
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