研究課題/領域番号 |
23710189
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
梅本 通孝 筑波大学, システム情報系, 講師 (10451684)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 減災 / 市民 / 災害リスク認知 / 東日本大震災 / 液状化 / 潮来市日の出地区 / アンケート / 居住継続 |
研究概要 |
本研究は,災害に対する一般市民のリスク認知の地理的分布を地図上に表現する「災害リスク認知の地理情報化手法」を開発し,減災対策への応用可能性を実証的に示すことを目的とするものである。そのためには,ケーススタディ地域において一般市民の災害リスク認知を計測することが必要とされる。 そこで,平成23年度中においては,東北地方太平洋沖地震によって甚大な液状化被害が生じた茨城県潮来市日の出地区を対象地域とし,潮来市の協力を受けて,住民アンケート調査を実施した。地震発生当時の同地区居住の世帯主2,562人に調査票を送付し,939人から回答を得た。本アンケートは,単に震災による震動や液状化による被害状況を把握するだけにとどまらず,震災前後における災害リスク認知や居住経緯などの個人・世帯条件,及び,現地での居住継続意識について被災地住民に尋ねた,という特長を有している。 被災住民の居住継続の有無は,被災地域復興の基礎的条件とも言え,当該地域及び自治体にとって極めて重要な課題であるが,その居住継続意向を震災被害という要因のみでなく,災害リスク認知や個人・世帯条件など多様な観点から分析を行うことによって,被災地における居住継続のための支援策のなど検討・立案に対して有用な示唆をもたらすことが期待される。また,震災以前・以後の住民の災害リスク認知と住民の居住継続意向との関連性の比較分析の実施は,災害リスク認知研究の政策的な応用可能性の検討に資するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,「災害リスク認知の地理情報化手法」を開発し,減災対策への応用可能性を実証的に示すことにあるが,平成23年度は,この目的の達成のための前半段階として,ケーススタディ地域における一般市民の災害リスク認知の計測,すなわち,潮来市日の出地区住民を対象としたアンケート調査を実施し,手法開発を行う上で必要不可欠な市民の災害リスク認知に関するデータを取得することができたため,2年計画の1年目終了時点としては,おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は平成23年度から2年間で実施するものであるが,2年目に当たる平成24年度は,前年度に実施したアンケート調査で取得したデータに基づき,災害リスク認知の定量的把握を行った上で,その地理的分布の推定結果の地図上表現を図る。さらに,これを各種災害のハザードマップと比較することにより対象地域における減災対策に関する課題抽出と改善策の提言を行う。 1)災害リスク認知の定量的把握:災害リスク認知の地理的分布推定の前段階として,前年度の調査結果に基づき,ポイントデータまたは局所的な集計データによって回答者の災害リスク認知を定量的に把握する。 2)災害リスク認知の地図上表現:ケーススタディ地域における災害リスク認知の地理的分布を推定し,GISにより地図上に表現する。 3)対象地域における課題抽出・改善策の提言:2)の結果を,対象地域における災害ハザードマップや被災実績などと比較し両者間の異同及びその傾向について分析検討し,対象地域自治体における減災対策に関する課題点を抽出するとともに改善策の提言等を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は,東日本大震災発生による学内・学外の震災対応,及び,被災地自治体支援活動が数多く重なったことからやむを得ず本研究へのエフォートが若干低減されざるを得なかったこと,また一方で,ケーススタディ地区におけるデータ取得に関して地元自治体の協力が得られたことから住民アンケート調査の実施コストが低減できたことなどの要因によって研究費が部分的(9.43%)に未使用となったが,これについては次年度使用額として次年度の研究費に組み入れ,被災地自治体等への旅費として使用するなど上記「今後の推進方策」に示した内容に沿って研究を遂行するために使用する。
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