研究課題
本研究は,スマートフォンを活用することにより,一人一人の生活パターンや位置情報,家族の情報を連携させることで,カスタムメイドされた「あなたのための」地震防災対策支援の実現を目的としている.当初計画では,帰宅支援などの機能を中心にしたものを予定していたが,研究計画段階以降,2011年東北地方太平洋沖地震が発生し,帰宅支援のためのアプリケーションが多数公開されたことを受け,本研究では災害前に災害時の状況を疑似的に体験させることによって,この体験の中で自分自身あるいは周囲の人の行動や判断がどのような結果をもたらすのかを認識させることで,一人一人の災害対策支援に結びつくようなツールの試作を行うこととした.具体的には災害直後の安否確認行動に着目し,家族全員で同時に進行可能な安否確認の疑似体験をスマートフォン上で実現するツールを開発した.個人の災害対策を考える時,①居住環境,②家族構成,③親戚との関係,④近隣(あるいはコミュニティ)との関係,⑤家族それぞれの職場や学校,デイケアなど日常滞在する場所,⑥家族それぞれの職業など,それぞれに事情が異なるため,一般論的に災害対策の正解を提示することは困難である.そのため,自分自身の状況を把握し,それに対してどのような対策を行えばいいのかを自ら考え,実行することが要求される.これを実現するためには,各個人の災害への準備状況がどの程度であるかを本人が認識する必要がある.しかしながら,何らの材料無しに,ある災害が起きたときに自分の準備状況に対してどんな結果が生じるのかを認識することは困難である.本研究によって開発されたツールは,自らの暗黙の準備状況によってもたらされる結果を疑似的に示す事で,家族内でこの結果を踏まえた対策の改善を行うことを可能にする.このサイクルを繰り返すことにより,個人の災害対策向上のためのマネジメント支援を実現するものである.
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
土木学会論文集A1(構造・地震工学)
巻: 69, 4 ページ: pp.I_161-I_170