研究課題/領域番号 |
23710194
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
後藤 雄治 大分大学, 工学部, 准教授 (00373184)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高張力ボルト / 圧縮応力 / 初期磁化曲線 / 導電率 |
研究概要 |
高張力ボルト(SCM435)と締め付け鋼板(SS400)の圧縮応力に伴う初期磁化曲線と導電率の測定を行った。本研究では検査対象を、高張力ボルトやワッシャ、ナットとして多く使用されているSCM435材と、締め付け鋼板として一般構造用鋼材であるSS400材とした。SCM435材とSS400材は5×5×150mmの直方体に加工し、圧縮応力の負荷に伴う初期磁化曲線と導電率の変化の測定を行った。なお、SCM435材の弾性限界圧縮応力は400MPaでSS400材は200MPaであるため、この範囲内での圧縮応力におけるそれぞれの特性の測定を実施した。試験体を圧縮させる際、試験体の4側面に貼り付けたひずみゲージを用いて試験体が一様に圧縮されているか、監視を行いながら圧縮を行った。磁気特性の測定は、励磁コイルに0.5Hzの低周波交流磁界を印加し試験体が一様に磁化される様に二つのヨークを用いて磁束の閉ループが形成されるように工夫している。また、試験体内の磁束密度Bは、鋼材に直接巻いている検出コイルのBコイル(20ターン)で、印加磁界の強さHはBコイルの真上に配置した空芯検出コイルのHコイル(200ターン)でそれぞれ出力電圧として測定する。各コイルからの出力電圧を、デジタルオシロスコープを用いてデジタルデータ(1周期あたり2000点)として検出し、台形積分することで算出した。その結果、SCM435材とSS400材は両方とも圧縮応力が強くなるにつれ、同じ磁界の強さにおける磁束密度が小さくなることがわかった。次に、ケルビンダブルブリッジ低抵抗回路の4端子法を用いて各圧縮応力における導電率も測定した。その結果、導電率は圧縮応力による変化は無く、SCM435材は3.7×106S/m、SS400材は5.4×106S/mで一定であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、高張力ボルトが締付けによって受ける圧縮応力によって変化する電磁気特性の差を検出することで、高速かつ簡便にボルトの緩みを検査する手法の開発を目的としている。本年度は、高張力ボルトやワッシャ、ナットとして多く使用されているSCM435材と、一般構造用鋼材であるSS400材が、ボルトが締付けられる程度の弾性領域における圧縮応力下で、どの程度、透磁率や導電率が変化するかを定量的に評価する事を第一の目標としていた。本年度は、圧縮応力下における電磁気特性差を精度良く測定できるシステムの開発を行い、その装置を使用して再現性ある測定結果が得られたため、概ね、当初の計画通り研究は進めてられていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、ボルトを締め付けた際のボルト頭部における圧縮応によって変化する電磁気特性の差を検出することで、高速かつ簡便にボルトの緩みを検査する手法の開発を目的としている。今後は、ボルトを締付けた際、ボルト頭部における圧縮応力分布を有限要素法の三次元応力解析で求め、各応力分布に見合った初期磁化曲線を考慮した三次元非線形電磁界解析を利用して、締め付けによって変化するボルト頭部の磁気特性差を検出する電磁気検査センサを提案し、より実用的な検査センサの開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、高張力ボルトの種類はSCM435材のM10半ねじ六角ボルトと、締め付け鋼板はSS400材に限定し、まずはこれに合った電磁気センサの開発を目標とする。このボルト頭部形状に見合った提案電磁気検査センサの試作を行い、ボルトを弾性領域内で締付け、そのときの圧縮応力分布を有限要素法の三次元応力解析で求め、また、各応力分布に見合った初期磁化曲線を考慮した三次元非線形電磁界解析を利用して、締め付けによって変化する提案電磁気センサの検出信号を評価する。そのため、研究費の使用計画としては、提案電磁気センサの試作費や、歪ゲージを埋め込んだ、焼鈍されたSCM435のM10半ねじ六角ボルトやワッシャー、ナット、SS400材の締め付け鋼板類といった基礎実験材料費に当てる計画としている。また、有限要素法の三次元応力解析と、磁気特性の非線形と渦電流を考慮した電磁界解析プログラムの開発も実施するため、数値解析用パソコンの購入も検討する予定としている。
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