本研究は、小中学生が災害・防災に対して「気づき」を持ち、わが地域の歴史災害を学ぶ中で「わがこと意識」を醸成させ、学習の成果を、子どもたちが自らの防災力を向上させるだけでなく、家族・地域の自助・共助能力の向上というかたちで地域に還元するという防災教育プログラム・教材を開発・提案した。 本研究では、東日本大震災を含め、歴史災害についての知見を被災者へのインタビュー調査や市販されていない体験談集などから収集・整理・体系化し、将来、南海トラフで発生する東海・東南海・南海地震などの巨大地震災害を見据えて、防災教育教材において「伝えるべき知見」「上げるべき能力」を特定した上で、学習課題の抽出と体系化を行った。 特に、研究では第2次世界大戦の末期、1944年12月7日に発生した海溝型地震である東南海地震、その37日後の1945年1月13日に発生した直下型地震である三河地震に焦点をあてた。これらの被災体験を収集し、防災の知恵として防災教育プログラム・教材を開発し、実際に愛知県内・三重県内の小学校で実践し、その成果を子どもたちの能力向上に留まらず、地域への波及効果も含めて検証を行った。この連続地震における知識・防災教訓は、南海トラフ巨大地震を迎え撃つ現在の子どもたちにとっては、命を守るための重要な学習内容であり、今後は他の地域へどのように展開していくかが次の課題として明らかになった。 日本では2011年度より新学習指導要領・生きる力が実施され、防災教育が教科学習などで行われるが、これらを実限するための具体的な教育プログラム・教材はまだ断片的にしか提案されておらず、本研究では現場の小中学校での実証実験をとおして、体系的防災教育のためのプログラム・教材を開発・提案できたことは大きな成果である。
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