樹木群の漂流物捕捉機能の定量的評価手法の確立を目的として,現地調査から得られた樹木群諸条件や漂流物諸元に基づいた水理実験を行い,樹木群による漂流物捕捉機能について,統計モデルに基づく評価式を提案した. 2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震による津波災害において,津波浸水域における並木などの樹木群による津波漂流物の捕捉事例を空中写真で探査し,漂流物の捕捉状況の判読を行った.さらに,樹木群諸条件(樹高,幹部直径,立木密度など)や漂流物諸元(流木や船舶などの種類やそのサイズなど)に関して高精度GPS測位器を用いた詳細調査を行った.宮城県多賀城市の製材工場内に貯蓄されていた資材や車が津波により押し流されていたが,工場敷地を囲う屋敷林により,これら津波漂流物の敷地外への流出が阻止されていた事例が確認できた.これらの調査結果から,間欠のない林帯では漂流物捕捉数が多いことや,漂流物が群体となった場合には,その個々の代表長さが樹木の間隔より狭い場合でも捕捉することが可能であることを明らかにした. 漂流物捕捉機能に関わる物理因子についてより詳細な検討を行うために,現地調査における樹木群諸条件(樹高,幹部直径,立木密度など)や漂流物諸元(流木や船舶などの種類やそのサイズなど)に基づいた水理実験を行った.水理実験の結果から,首藤(1985)の植生厚みdn(d:樹木の幹直径,n:単位林帯幅あたりの立木本数),D/d(D:最大氾濫浸水深),Lm/lt(Lm:漂流物の代表長,lt:並木間隔),L/W(L:漂流物の縦横比)の無次元パラメータが並木の漂流物捕捉条件に関する物理因子が支配的であることを示した.以上の無次元パラメータを用いて不確実性を考慮した統計モデルに基づく樹木群の漂流物捕捉機能の評価式を構築した.加えて,漂流物の発生要因や漂流物の密度変化による捕捉割合の変化傾向を検討した.
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