本研究の目的は、前近代(明治時代以前)に発生した歴史地震を対象として、時代別・地域別の建造物の特性に基づいて被害状況を基準化し、それに依拠した確実度の高い震度推定の基準を確立することである。そのためには、歴史地震における震度推定を行う際に、建造物の被害状況だけではなく、その特性や履歴について可能な限り基準化の対象とし、様々な基準を組み合わせた相互分析に基づいて被害状況の評価を厳密に行う必要がある。このような多角的な分析を行うことによって、従来よりも客観的で妥当性の高い被害程度を導き出し、より確実度の高い推定震度を求めることができると考える。 そこで本研究では、前近代に幾度の被害地震に遭遇しながらも、当時の工法で造られた建造物が数多く現存している近畿地方のうちで、特に京都・奈良・大津といった都市域を対象として、歴史地震における被害状況と建造物の特性との関係を分析していく。 平成25年度は、昨年度に引き続き、史料・文献の調査を実施し、歴史地震による建造物の被害が記された新たな史料や、文化財修理報告書・建築史関連論文など関連資料の収集・分析を行った。また、既刊の地震史料集に所収されている史料群から信頼性の高いものを選び出し、そこから京都・奈良・大津などでの被害地震の記述を抽出して、被害状況の分析を実施した。さらに、昨年度に引き続き、1596年の伏見地震における京都盆地での被害状況について、史料の信憑性や建造物被害の分析に基づく被害評価方法の試案を作成し、その妥当性の確認および改良を行った。
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