研究課題/領域番号 |
23710203
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
金丸 龍夫 日本大学, 文理学部, 助教 (40453865)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 火砕流 / 定置温度 / 古地磁気 / 酸化 / 浅間火山 / 吾妻火砕流 |
研究概要 |
平成23年度は,野外調査に重点を置き,肉眼と帯磁率計による吾妻火砕流堆積物の記載と分類,室内実験用試料採取を主に行った. 今年度行った野外調査では以下のことが明らかとなった.すなわち,吾妻火砕流堆積物には,一般的に,肉眼的に赤く見える部分(赤色部)と黒色の部分(黒色部)が見られ,赤色部がより上位に見られる.また赤色部と黒色部は連続的に漸移的し,中間的な色調を示す部分が見られる.このことから,赤色部と黒色部は,連続した1つのユニットであると考えられる.赤色部・黒色部のユニットが2つ以上重なる場所が見られることから,吾妻火砕流は複数のフローユニットにより構成されているものと考えられる. 室内実験用には,古典的な熱消磁法による古地磁気測定を用いた定置温度見積もりを行うための試料として火砕流の本質レキを,またそれと同地点から,本研究による新手法である酸化度測定用に火砕流の基質部分の試料を採取した.室内実験は持ち帰り試料の帯磁率測定を重点的に行なった.その結果,基質部分から採取した試料のうち,赤色部の帯磁率は,黒色部の帯磁率の約半分程度の数値を示し,中間的な色調を示す部分は,帯磁率の数値も中間的な値であった. 以上のことは,研究計画時のねらい通り,吾妻火砕流堆積物は,その定置時に黒色部が酸化され赤色部が形成されたことを示唆しており,火砕流堆積物の肉眼観察の結果と岩石磁気特性が,大局的には,相関した挙動を示すことを表しており,平成24年度移行に行う予定の岩石磁気実験が有効であろうことを示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成23年度は,(1)野外調査(2)室内実験用試料採取(3)顕微鏡による観察(4)各種岩石磁気実験(5)鉱物組成分析により,堆積物の基礎的な情報を収集する予定であった.しかしながら,実際には上記(1)~(4)の一部を行ったのみに過ぎない.この理由の1つとして,東北大震災の影響により,本研究費の支給金額の確定が遅れたことを発端に,購入予定の顕微鏡の納期が1月下旬までずれ込んでしまったことが挙げられる.これにより,顕微鏡観察後に行わなければならない各種実験を行うことが出来なかった.別の理由としては,各種機器の故障やその修理などによりマシンタイムの確保が難しかったことが挙げられる.また,11月からの3ヶ月ほどの出張の前後で学内のエフォートが立てこんでしまった事により,研究に充てられる時間が限られてしまったことも1つの理由である.
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今後の研究の推進方策 |
基本的な研究方針は,研究実施計画に記したものと変更なく行う予定である.ただし,これまでに行った作業により,より定量的な評価が必要であることが判明した,火砕流堆積物の色調に関する検討を加える予定である. 具体的には,平成24年度の中期までに,これまでに採取した試料の室内実験と顕微鏡観察,鉱物分析を行い,その結果から補足的な野外調査を行う予定である.これらの結果を踏まえ,平成24年度後期から平成25年度前期頃を目安に,加熱による人工的な酸化実験を行い,天然試料との比較により,本研究の目的である火砕流堆積物定置温度見積の新手法を確立したいと思っている.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,昨年度の研究から必要であることが判明した土色計および本研究費により購入した顕微鏡改良とその画像撮影装置の導入に充てる定である.野外調査や各種機器の運転資金などは学内研究費を充てる予定である.
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