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2012 年度 実施状況報告書

宇宙線生成核種の分析による山地源流域の土砂生産ポテンシャルの定量化

研究課題

研究課題/領域番号 23710208
研究機関京都大学

研究代表者

松四 雄騎  京都大学, 防災研究所, 准教授 (90596438)

キーワード宇宙線生成核種 / 流域 / 侵食速度 / 土層形成速度 / 土砂生産 / 加速器質量分析
研究概要

日本各地の花崗岩山地および堆積岩山地において,渓流堆砂試料を収集し,化学処理によって石英粒子を抽出して,加速器質量分析による宇宙線生成核種の定量を行った.宇宙線生成核種の濃度データは,国土地理院基盤地図情報の10-mメッシュデジタル標高モデル(DEM)から得られる緯度,標高および傾斜等の空間情報データから求めた核種生成率を用いて,流域斜面の長期的な空間平均侵食速度に換算した.
得られた侵食速度の値は,80 mm/kyrから7000 mm/kyrまでの広い範囲に分布し,流域斜面の平均傾斜に対して非線型に対応していることが分かった.すなわち,流域斜面の平均傾斜が増大するとともに侵食速度も増大するが,傾斜が40°程度のしきい値に近づくと急激に侵食速度が大きくなり,それよりも傾斜の大きな流域では侵食速度がかえって小さくなるという傾向がみられた.これは,流域内に存在する,侵食されうる風化物質の量の変化に対応しているものとして解釈することができる.
流域斜面を覆う土層の形成速度についても,宇宙線生成核種を用いた定量を行った.土層厚が定常状態にあるとみなすことのできる尾根型地斜面において,土層直下に存在するサプロライト最上部から試料を採取し,それに含まれる宇宙線生成核種の濃度から,サプロライトが土層へと変化する速度を求めた.その結果,土層形成速度は土層の厚みの増大に伴って指数関数的に減少し,その値は20 mm/kyrから400 mm/kyrの範囲であった.これは先に求めた流域平均の侵食速度よりも小さく,表層崩壊などによって斜面上の物質が土層化を待たずに削剥されていることを示すものであった.
これらのデータは日本で初めて得られた,系統的な流域の長期侵食速度,土層形成速度の値であり,流域の土砂管理,砂防計画の立案に有益な情報をもたらすものである.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

山地流域における渓流砂の収集とその分析による侵食速度の定量化は順調に進んでいる.昨年度以降,六甲山地や京都近郊の花崗岩地域,中部日本の堆積岩地域等において,現在までに約40か所でのデータを取得することができた.また流域斜面において,どのような速度で削剥されうる物質(土層)が形成されているのか,という点についても,宇宙線生成核種によって定量的なデータを得ることができた.宇宙線生成核種の分析には計画始動時とほぼ変わらぬ時間とコストがかかるものの,処理手順について効率化を図り,ルーチン的にデータを得ることができるようになった.

今後の研究の推進方策

次年度ではさらに中央アルプスや20試料程度の渓流堆砂の分析を予定している.また土層の形成速度を得るための試料についても追加的に分析を行う.これらのデータを位置・地形・地質等の種々の空間情報とともに整理することで,流域土砂管理や災害ポテンシャル評価の基礎となるようなデータベースの提供ができるものと考えている.また,斜面上でどのようにして土層が形成され,どのようなプロセスによって侵食されているのか,ということについて探究を行うため,野外観測も計画している.これにより,土層の形成と集積,表層崩壊による排出をモデル化して流域の土砂生産を統合的に理解するための基礎を作ることができると考えている.

次年度の研究費の使用計画

次年度研究費では,まず宇宙線生成核種の分析ための実験消耗品(化学薬品やディスポーザル実験器具)の購入や,加速器使用料への支出を予定している.また野外観測機器(テンシオメータ用圧力センサー等)の購入を計画している.野外調査のための旅費,実験分析のための滞在費,論文出版のための英文校閲費等に研究費を使用する計画である.

  • 研究成果

    (4件)

すべて その他

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] Quantifying soil formation and sediment yield in mountains watersheds using terrestrial cosmogenic nuclides

    • 著者名/発表者名
      Yuki Matsushi, Hiroyuki Matsuzaki
    • 学会等名
      19th International Mass Spectrometry Conference
    • 発表場所
      Kyoto
  • [学会発表] Rates of soil production and watershed denudation in granite mountains in Japan

    • 著者名/発表者名
      Yuki Matsushi, Satoshi Takayama, Makoto Toyama, Tsuyoshi Hattanji, Masahiro Chigira, Hiroyuki Matsuzaki
    • 学会等名
      MALT progress symposium
    • 発表場所
      Univ Tokyo
  • [学会発表] Potentials of terrestrial cosmogenic nuclides in geomorphology, disaster prevention, and erosion control engineering in humid active orogens

    • 著者名/発表者名
      Yuki Matsushi, Hiroyuki Matsuzaki
    • 学会等名
      MALT progress symposium
    • 発表場所
      Univ Tokyo
  • [学会発表] 日本のいくつかの花崗岩山地における土層の形成速度と流域の侵食速度

    • 著者名/発表者名
      松四雄騎・千木良雅弘・松崎浩之
    • 学会等名
      日本地形学連合
    • 発表場所
      大阪教育大学

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公開日: 2014-07-24  

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