地表近傍の造岩鉱物中に蓄積する宇宙線生成核種を用いて,山地の削剥速度を決定する研究を行った.この手法を用いると,山地において,斜面崩壊の予備物質となる土層がどれほどの速度で形成されるか,また流域からどれほどの速度で土砂が生産されるかについて,千年から万年程度の長期スケールでの平均値を得ることができる.日本列島の全域で本手法を適用したところ,土層の形成速度として10-1000 g/m2/yrの値を,流域の削剥速度として100-10000 g/m2/yrの値を得た.大起伏山岳において,流域の削剥速度は土層の形成速度よりも大きく,基盤岩を削る崩壊によって山地の削剥が進行していることが明らかとなった.
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