雷放電から放射されるLF帯電磁波を受信し詳細な三次元標定を可能とする観測器の開発を行った。これにより、Broadband Observation network for Lightning and Thunderstorm (BOLT)と呼ぶ雷放電三次元可視化装置の開発に成功した。BOLTは現在北陸地方を含む関西全域を観測対象とし、そのネットワークの中心付近では雷放電路を詳細に三次元可視化できることを観測により確認している。現在、雷放電とダウンバーストの因果関係についてデータを解析中である。その一方で、BOLTを開発・構築し試験観測をする上で雷放電に関する重要な知見を得ることができた。 Narrow Bipolar Pulse(NBE)に関する発生高度と積乱雲の内部構造の事例解析が挙げられる。NBEとは雷放電とは独立した放電現象でこれまでその存在は知られていたが、発生条件や発生高度等、その発生メカニズムに関することは不明点が多かった。今回BOLTによりNBEの観測および三次元標定に成功し、大阪大学キャンパス屋上に設置しているフェーズドアレイレーダーとのデータ比較により、NBEは積乱雲のエコー頂付近で発生するという事実を突き止めた。さらに負極性のNBEは積乱雲が非常に発達した時のみ発生することを観測により示した。このことはNBEの観測を用いることにより積乱雲の成熟度を監視可能であることを示しており、局所的大雨などの予測にも利用できる可能性を示している。
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