小型船舶用防振架台の省スペース・省エネルギ化を図るために、動吸振器、メカニカルスナッバの適用を検討してきたが、どちらの要素も受動型であるために制振に関する仕様を満たすのが困難であることが分かった。メカニカルスナッバにクラッチを取り入れた新機構を考案し、ばね上加速度と、ストレチャー・床面相対加速度の位相差に着目したクラッチ制御則を提案した。受動型と比較して固有振動数を低周波数側に設定できる利点があるが、合わせて高周波数側の制振性能が劣化し、劇的な改善を得ることは困難であることが明らかになった。そこで、受動型要素として省スペース・省エネルギ化を実現する方策は、最終的にスカイフック理論に基づく絶対天井の近似機構とした。その制振性能は絶対天井面の近似実現度によるが、高精度の近似機構が開発できれば、高周波数側の制振性能の劣化を抑えながら固有周波数を低周波数側に設定でき、制振仕様を満足することが理論的には可能である。固有振動数を低周波数側に設定する際に単純にばね上質量を増加させた場合と比較して、絶対天井近似機構ではどの程度の質量増加が見込まれるのか、数値シミュレーションを行って分析した。制振性能を満足するように単純にばね上質量を増加させた場合は、おおよそ2.5t(想定した患者質量の約350倍)の追加質量が必要であり現実的でないことが明らかとなった。一方、絶対天井近似機構では230kg程度の質量からなる機構を追加すればよいことが明らかとなった。以上の結果から、小型船舶用防振架台の省スペース・省エネルギ化を実現するためには、絶対天井の近似実現機構が必要不可欠であるとの結論に至った。
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