研究概要 |
アメダスデータを用いた積雪の物性値の計算に関して, 1)平年値を利用する方法, 2)平年値に近い積雪深変化を示す数年の気象データを利用し計算結果を平均する方法, 3)最近10年間の気象データを利用し計算結果を平均する方法, の3つの方法を試した結果, 1)の方法では,うまく積雪状況を再現できないが, 2)並びに3)のどちらの方法でも妥当な積雪状況を再現することがわかった. 積雪の粘性係数の気圧依存性の原因が急速な変質にあることを実験的に明らかにし, 学会で発表した. 現在積雪変質モデルにその効果を導入するためのモデル化に向けた実験を行っており, 近々まとめて論文化する予定である. 従来の断面観測よりも詳細な積雪物性値を測定する方法として, 乾いた雪のみで使用されていた積雪の近赤外領域の反射率を使って比表面積を測定する方法(NIR法)を, 日本の濡れ雪地帯に適用する際の問題点並びに改良点を明らかにし論文化した. また積雪の近赤外領域の反射率に関する実験を行い, その結果の一部を日本雪氷学会並びに国際学会で発表した. このように本研究の目的であった「異なる気候域において, 積雪の物性値の時間変化を観測・数値計算の両方から検討する」点に関しては概ね順調に進んだ. また「大循環モデルおよび地域気象モデル内において, 積雪の物性値をどのように地域依存性, 季節依存性を持たせるか」という点に関しては,本研究の成果を基に広域気候モデルや地域気象モデルを使っている研究者と継続的に議論を行っている. また本研究を通じて, 1) 粘性係数の気圧依存性, 2)乾いた雪のみで使用されていたNIR法の濡れ雪への適用方法, 3)本州の日本海側の冬期における気温別降水量に関する新しい知見, 等が得られ当初予想していなかった方面での研究の発展もあった.
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