研究課題/領域番号 |
23710215
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
堀家 慎一 金沢大学, フロンティアサイエンス機構, 助教 (40448311)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 自閉症 / インプリンティング / PWS-IC / 染色体ペアリング / 核内配置 / エピジェネティクス / DNAメチル化 / TCマウス |
研究概要 |
ヒト染色体移入技術によってヒト15番染色体を1本保持するTCマウスを作出した。本TCマウスの行動解析の結果,オープンフィールドにおける新奇オブジェクトに対する反応性とホームケージ活動量に有意な差を見いだし,染色体の数的異常がもたらす脳機能障害のモデルとなると考えられた。しかしながら,過剰なヒト15番染色体が如何に脳機能障害という表現型につながるかは明らかにされていない。そこで,平成23年度はヒト15番染色体を1本保持するTCマウスにおいて,マイクロアレイやリアルタイムPCR法による遺伝子発現解析を行った。その結果,内在性のマウス7q,Snrpn-Gabrb3領域における遺伝子発現には変化がないことが分かった。しかしながら,ヒト15番染色体上のsnoRNA, HBII-52遺伝子の過剰発現により,スプライシング異常を伴ういくつかの遺伝子の同定に成功した。また,ヒトの神経細胞で以前に見出した「染色体ペアリング」と呼ばれる現象がマウス7q,Snrpn-Gabrb3領域にも認められるかDNA-FISH法で解析した。その結果,Gabrb3領域にかかる3つのBACプローブでは少なくとも神経細胞特異的な「染色体ペアリング」は観察されなかった。今後,Snrpn-Gabrb3領域の核内配置を詳細に検討することでマウス7q,Snrpn-Gabrb3領域の「染色体ペアリング」領域を明らかにする。PWS-IC欠損ヒト15番染色体を保持するTCマウスの作出実験では,ニワトリDT40細胞を用いた改変ヒト染色体の作製に取り組んだ。PCR法により,PWS-IC領域の欠損を確認した。キメラマウス作出のため,微小核細胞融合法によりPWS-IC欠損ヒト15番染色体をマウスES細胞に移入した。核型解析を行った上で,キメラマウスの作出を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト15番染色体を1本保持するTCマウスにおける遺伝子発現および核内配置の解析は,概ね研究計画通り遂行した。一方,PWS-IC欠損ヒト15番染色体を保持するTCマウスの作出実験では,PWS-IC欠損ヒト15番染色体のマウスES細胞への移入に時間を要したため,キメラマウスの作出までは出来なかった。今後,早急にキメラマウスの作出に着手し,24年度の研究計画を遂行できるように努力する。
|
今後の研究の推進方策 |
内在性のマウス7q,Snrpn-Gabrb3領域の染色体配置の解析を共同研究者であるUC DavisのDr. LaSalleと詳細に議論を行い,「染色体ペアリング」領域の同定に努める。また,PWS-IC欠損ヒト15番染色体を保持したTCマウスを早急に作出し,アニュプロイディーがもたらす染色体ペアリングやPWS-IC相互作用の異常が組織特異的であるかTCマウスを用いて明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究で得られた研究成果を国内外の学会などで成果発表するための経費と論文投稿にかかる経費を計上する。また,平成24年度はPWS-IC欠損ヒト15番染色体を保持したTCマウスを作出するため,研究費の大部分はキメラマウスの作出とその維持経費や解析に係る消耗品の購入に充てる予定である。
|