研究課題/領域番号 |
23710218
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
増田 豪 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 研究員 (70383940)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 細胞表面抗原 / 膜タンパク質 / プロテオーム |
研究概要 |
1.細胞外領域を同定するには複数ある消化酵素の中から最も多く細胞外領域を検出できる酵素を選別する必要があるが、実験的に確認するには組み合わせが多く効率が悪い。そこで、in silicoで同定結果を予測し、実験的に確認する候補を絞った。Lys-Cとキモトリプシンが最適な組み合わせであり、88%の膜タンパク質の細胞外領域を同定できると予測された。その他、膜タンパク質の同定数が多い5種類の組み合わせについて実験的に確認する。2.実験の効率を上げるために、消化時間を短縮した。まず、Sigma、GLサイエンスおよびABI社から販売されているトリプシン固定化ビーズの性能を評価した。その結果、ABI社のPoroszyme Trypsin beadsを使用することで、タンパク質の同定数を減らすことなく、消化時間を12時間から15分に短縮できた。申請者はスピンカラムの先端に詰めるガラスキャピラリーの内径、長さ、遠心力、遠心時間およびビーズの充填量を最適化し、最終的に、ビーズを内径75um、外径375 umガラスキャピラリーを詰めたゲルローディングチップに充填し、100g で15分間処理することで最適な結果が得られた。3.分子数の少ない膜タンパク質でも感度良く同定するには、現状の分析システムでは感度が低い。試料導入時の回収率および分析カラムの微小化を試みた。試料導入時の回収率を改善するため、カラムローダーを用いて試料を直接分析カラムに導入した。導入時の試料量、試料溶媒および溶媒組成などを最適化した。また、分析カラムの内径を0.25倍に細くすることで感度を4倍に促進させた。構築されたシステムを使用することで、従来のLC-MSシステムに比べて感度が80倍に改善し、同定数は約5倍に上昇した。このシステムはプロテオームだけでなくLC-MSを用いる他の分析にも応用可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画通り、目的は達成されているため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に基礎となる測定技術は確立された。次年度はヒトの各種組織由来細胞株(HeLa, MCF7, K562, A549など)について、膜タンパク質の細胞外領域を決定していく。最後に、各膜タンパク質について実験的に同定された細胞外領域をデータベース化し公開する。 細胞外領域を同定する際に、消化酵素による処理中に、細胞が壊れ細胞質タンパク質が混ざり細胞外領域の同定数が著しく低下してしまうことが推測された。そこで、この問題がおきた際には、細胞が破砕されないようにあらかじめホルマリン等で固定した後、消化する。本方法はフローサイトメトリーにおいて確立された方法である。ホルマリンで細胞を固定するとリシン側鎖などが修飾を受けてしまいトリプシンやLys-Cで切断できなくなる。そこで、キモトリプシンやプロテインナーゼKなどリシンを標的としない消化酵素を用いることでこの問題を回避する。
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次年度の研究費の使用計画 |
プロテオミクスで得られた本研究結果の妥当性を確認するため、一部の細胞外領域については抗体を用いて確認する予定である。したがって、免疫化学的実験に必要な、1次抗体、2次抗体や発色液などを物品費として支出する。また、本研究で得られた成果はデータベース化し公開するため、高性能なパソコンを購入する。 本研究成果を広めるため、2つの国際学会(アメリカ質量分析学会および国際ヒトプロテオーム学会)および2つの国内学会(日本プロテオーム学会および分子生物学会)に参加するため、これらの移動費を旅費として支出する予定である。 初年度に開発した高感度分析システムを応用した研究内容について論文を執筆中であり、英文校正費を謝金から支出する予定である。
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