研究課題
細胞表面抗原タンパク質の発現パターンは細胞種固有であり、その情報は再生医療や抗体医薬品の開発などに有用である。LC-MS/MSを用いたショットガンプロテオーム解析はタンパク質の網羅的解析に有用である。しかしながら、細胞表面抗原タンパク質は疎水性が高く、存在量が少ないため網羅的解析が困難なタンパク質群である。そのため、超遠心機などを用いた膜画分の濃縮操作などが必要だった。しかし、これまでの分画法は煩雑であり回収率が低く、分画試料はショットガンプロテオーム解析に直接使用できなかった。そこで、本研究ではショットガンプロテオーム解析に適した高回収率で簡便な細胞分画法を開発した。デオキシコール酸ナトリウム(SDC)およびラウロイルサルコシン酸ナトリウム(SLS)を用いることで、細胞を細胞質基質、細胞内小器官および核画分に分画できた。また、本方法では相間移動可溶化剤であるSDCおよびSLSを用いている。したがって、ショットガンプロテオーム解析の前処理に分画試料を直接使用できるため回収率が高い。また、抗体を用いて分画精度を評価したところ、細胞表面抗原であるCD44は予想した通り細胞内小器官画分に濃縮された。同時に細胞質基質タンパク質や核タンパク質であるLDHAやLamin A/Cはそれぞれ細胞質基質および核画分に濃縮された。またショットガンプロテオーム解析において、13種類の細胞表面抗原を含む合計209種類の膜貫通タンパク質が同定された。さらにリン酸化プロテオーム解析を組み合わせたところ、リン酸化CD44の核移行など翻訳後修飾依存的な細胞内局在変動を観察できた。本手法は回収率が高く、既存の方法(S-PEK)よりも分画精度が高いだけでなく、これまで精確に分画できなかった少ない試料(105細胞)にも適用可能だった。この方法を用いることで、効率よく細胞表面抗原の同定が可能となった。
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