研究課題/領域番号 |
23710220
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
奥田 賢治 中央大学, 理工学部, 助教 (60423505)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 葉緑体 / RNA編集 / PPR蛋白質 |
研究概要 |
植物オルガネラ(葉緑体とミトコンドリア)では、進化の過程で誤って変異したオルガネラゲノムの遺伝情報がRNA編集によりRNA上で修復される。RNA編集機構の多くは未知であり、この全容解明には分子装置の同定が必須である。申請者のこれまでの研究から、PPR蛋白質が編集サイトを認識する因子として働くことが明らかになったが、編集装置の本体である編集酵素の正体は未知である。本年度は研究実施計画に沿って、編集酵素の強力な候補因子であるDYW蛋白質の機能解析を行った。(1)in vitro RNA編集系を用いた研究から、植物オルガネラのRNA編集はRNA上のCを脱アミノ化反応でUへと変換していることが明らかになっている。そこで組み換えDYW蛋白質とin vitro合成した基質RNA(編集サイトを含む)を用い、in vitroでDYW蛋白質がRNA編集(シチジン脱アミノ化)活性を有しているかどうかを調べた。しかしながら、組み換えDYW蛋白質はシチジン脱アミノ化活性を示さなかった。(2)GFPと融合したDYW蛋白質を発現する形質転換植物を作製し、その局在を解析した。その結果、DYW蛋白質は葉緑体に特異的に局在することが明らかになった。(3)DYW蛋白質をコードする遺伝子破壊株を取得し、葉緑体RNA編集の状態に異常があるかどうかを解析した。その結果、DYW蛋白質遺伝子破壊株は葉緑体におけるある特定のRNA編集サイトを欠損していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画におけるDYW蛋白質の機能解析について、(1)組み換えDYW蛋白質とin vitro合成した基質RNA(編集サイトを含む)を用い、in vitroでDYW蛋白質がRNA編集(シチジン脱アミノ化)活性を有しているかどうかを調べること(2)GFPと融合したDYW蛋白質の葉緑体およびミトコンドリアにおける局在を解析すること、を目的とした。H23年度の研究実績の概要に示したように、両方の目的に対する解析を行い、それらに対する結果を得た。加えて、DYW蛋白質遺伝子破壊株のRNA編集解析を行い、それに対する結果を得た。これらのことから、研究実施計画に書いたH23年度の目的はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度の研究から、DYW蛋白質はシチジン脱アミノ化活性を示さなかった。しかしながらDYW蛋白質中にはヒトRNA編集酵素の活性部位に相当するアミノ酸配列が含まれており、DYW蛋白質が編集酵素の正体であるという可能性はいまだ排除できない。そこで、研究実施計画(H24年度)に沿って、DYW蛋白質の機能解析については、以下の研究を行う。申請者の先行研究から、DYW蛋白質が編集酵素の正体であれば、DYW蛋白質はPPR蛋白質のもつEモチーフと相互作用することが考えられる。そこで、組み換えDYW蛋白質と組み換えPPR蛋白質がin vitroで相互作用するかどうかをプルダウン法により解析する。加えて、Bi-Molecular Fluorescent Complementation法を用いて、植物細胞内でのDYW蛋白質とPPR蛋白質の相互作用を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費の多くについては研究室に既存の消耗品・試薬で代用することができたため、また予定していた旅費(学会参加費)は学内研究費で賄われたため、H23年度からの繰越金が発生した。H24年度分については予定通りの費用内訳で使用することを計画し、繰越金についてはH23年度に使用し終えた既存の消耗品・試薬の補充または備品の故障などによる代替品購入に対応すること等を主として使用することを計画している。
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