研究課題
本研究では、生殖細胞系列のエピゲノム基盤として、マウスメチル化インプリント領域(DMR)の系統的単離・同定と領域内分子機構の解明、ヒトへの保存性を基に、ヒトARTがゲノムインプリンティング(GI)機構に与える影響について明らかにすることを目的とする。昨年度は、ヒト網羅的インプリント領域(DMR)の解析により、ヒト22領域を同定した。本年度は、DNA多型を含む正確なメチル化インプリントの解析を実施した。形態学的な精液検査(量、精子濃度、運動率、奇形率)を受けた男性197名より、精子を回収した。収集した精子は、スイムアップ法により、リンパ球、上皮細胞を除去した。精液検査では、「正常精子」は132例、「中等度乏精子症」は38例、「重症型乏精子症」は27例であった。22領域のヒトインプリント遺伝子(H19、GTL2、ZDBF2、DIRAS3、NAP1L5、FAM50B、ZAC(PLAGL1)、GRB10、PEG10、PEG1(MEST)、INPP5F-v2、LIT1(KCNQ1OT1)、RB1、SNRPN、ZNF597、ZNF331、PEG3、PSIMCT-1、NNAT、L3MBTL、NESPAS、GNAS1A)のDMRについて、DNAメチル化の解析をおこなった。197検体中、50検体(25.4%)でメチル化に異常が確認された。重症乏精子症で27例中20例、中等度乏精子症38例中8例、正常精子132例中22例となった。その中で、精子型、卵子型の両方に異常を持っているのは50例中19例であった。また、精子濃度との関係を調べてみたところ、重症乏精子症群で66.7%、中等度乏精子症群で11.1%、正常精子群で22.2%が、3種以上の遺伝子に異常を持つことが確認された。
2: おおむね順調に進展している
不妊症男性精子の収集は、目標どおりに行なわれた。DNA多型を含むメチル化解析を応用する事で、正確なメチル化インプリントの解析が可能となり、信頼のおける成果が得られている。
統計学的解析により、ヒト男性精子のインプリント異常について、正確に評価し、その異常の頻度、程度、影響を受けやすい領域を明らかにする。また、精子性状との関連性についても明らかにする。さらに、異常のパターン分類により、DNAメチル化異常の発症メカニズムについて、総合的に検討する。さらに、メチル化基質合成酵素遺伝子とメチル化酵素遺伝子の遺伝子変異などについて解析する。
次年度は本年度同様にPCR関連試薬、シークエンス用試薬、細胞培養関連試薬、実験動物等の物品費と、学会発表のための旅費、英文校閲謝金、論文投稿費などに本研究費を使用する予定である。次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額と合わせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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