研究課題
ヒト生殖補助医療(ART)の普及に伴い、本来稀なゲノムインプリント異常症の発症頻度の増加が世界中で報告されている。本研究では、生殖細胞系列のエピゲノム基盤として、ヒトメチル化インプリント領域(DMR)を同定し、ARTがゲノムインティング機構に与える影響について明らかにすることを目的とする。申請者は平成25年度に、ヒトDMR22領域について、不妊症男性精子197例のメチル化解析を行い、重症型乏精子症群ではメチル化異常の高頻度および複数領域の異常を明らかにした。本年度は、インプリント疾患患者の血液DNAを用いて、bisulphite-polymorphic PCR sequence法により、メチル化インプリント22領域およびインプリントを受けないメチル化領域(AluおよびLINE)のDNAメチル化解析を行った。Silver-Russell症候群(SRS)において、ART治療を受けた患者では5症例中4例に複数のインプリント領域でメチル化異常が観察された。4例全てにおいて、卵子型および精子型DMRの両領域に異常が見られた。また、同一症例で、高メチル化および低メチル化を示し、その程度は完全型ではなくモザイク型を示す特徴が観察された。Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)では、ART治療を受けた症例は1例しか解析できなかったが、同様の傾向が見られた。一方、非ART群において、SRSでは10症例中3例、BWSでは6症例中1例に複数領域にメチル化異常が観察された。以上の結果から、非ART児に比較して、ART児のメチル化インプリント領域は複数のメチル化異常およびメチル化異常パターンがモザイクを示すなど複雑であることから、ARTにおけるリスクは、配偶子形成期よりも受精以降の過程であることが推察された。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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