心臓発生の基盤として機能する転写因子とエピジェネティック因子による転写制御メカニズムを明らかにすることにより、先天性心疾患の発症機構を理解し、新たな治療法開発の基盤を確立することを目的とし、A. 転写因子Nkx2-5、Tbx5、GATA4のゲノムワイドな標的領域のChIP-Seq法による同定。B. 転写因子Nkx2-5、Tbx5、GATA4と相互作用するエピジェネティック因子の免疫沈降法による同定。C. 初代培養心筋細胞のsiRNAノックダウンのシステムによる転写因子-エピジェネティック因子転写調節メカニズムの解明。の3点について、2011年度より引き続き研究を行った。 A. 転写因子Nkx2-5、Tbx5、GATA4のゲノムワイドな標的領域のChIP-Seq法による同定。においては、マウス胎仔心臓を用いて、これらの転写因子が結合する標的ゲノム領域を同定した。B. 転写因子Nkx2-5、Tbx5、GATA4と相互作用するエピジェネティック因子の免疫沈降法による同定。においては、マウス胎仔心臓の核抽出液を用いて、転写因子に対する抗体で免疫沈降を行い、共免疫沈降してくるエピジェネティック因子を探索した。その結果、これまでに相互作用することが明らかになっているヒストンメチル化酵素Whsc1などが相互作用していることが明らかになった。C. 初代培養心筋細胞のsiRNAノックダウンのシステムによる転写因子-エピジェネティック因子転写調節メカニズムの解明。については、マウス胎仔心臓から得た初代培養心筋細胞で転写因子のノックダウンを行い、RNA-seqによって発現変動する遺伝子を同定した。以上の結果より、先天性心疾患の原因となる転写因子が、どのように転写を制御し、正常な心発生に寄与しているか明らかにするための基盤を築くことができた。
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