研究課題
ここ数年のゲノムワイド関連解析(GWAS)の成功により、疾患形質と関連する遺伝的多型が数多くの染色体領域に位置決定(マッピング)されてきた。しかし、しばしば当該領域中に複数の遺伝子が存在し、そのうちのどれが責任遺伝子か絞り込めない状況にある。関連を示す多型の多くが人種間で共通するものの、人種ごとに、対立遺伝子の頻度やその遺伝的効果が異なることが、我々の先行研究から示されていた。本研究は、人種差を利用して、GWASでマッピングされた染色体領域中の責任変異を絞り込む手法を開発し、実データで検証することを目的とした。絞り込みにあたっての作業仮説は、真の責任変異自体は人種共通に強い関連を示すのに対して、近傍の(責任変異以外の)多型は遺伝的浮動により人種ごとに関連が弱まることである。提案手法では先ず、染色体領域中の多型を、複数人種で強い連鎖不平衡を保つグループに分ける。次に、各グループを代表する多型を選び、重回帰分析により疾患に寄与するグループを絞り込む。日本人とスリランカ人についてSNPタイピングを行い、欧州人については公開データを用いた。またDNAサンプル採取の準備実験も行った。責任変異を絞り込めたのは、2型糖尿病と関連するCDKAL1, CDKN2A/B, FTO, IGF2BP2, KCNQ1(国際共同研究)、虚血性心疾患・高血圧と関連する12q24領域、ハンセン病・クローン病と関連する13q14領域である。責任変異が二つ以上存在することが分かった領域もあった。子宮頸癌については欧州人でHLA領域との関連が報告されているが、日本人では関連がみつからなかった。本研究により、複数人種の関連解析を組み合わせて効率的に責任遺伝子多型リストが絞り込めることが分かった。様々な疾患解析に応用し、機能解析や治療薬の開発へと展開させることができる。本手法のソフトウェアは今後開発する。
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Hum. Mol. Genet
巻: 22 ページ: 2303-2311
DOI:10.1093/hmg/ddt064