研究概要 |
平成23年度は、遺伝的アルゴリズムとサポートベクターマシーンであるChromaGenSVMをもとにエンハンサー検出のための計算方法を開発した。ChromaGenSVMは、ChIP-chipおよびChiP-seqライブラリーからエンハンサーの同定が可能であり、効率よくエンハンサー予測できる(Fernandez and Miranda-Saavedra (2012) Nucleic Acids Research)。我々はFas制御のエンハンサー同定のための実験を昨年度より継続したが、当初予想よりも困難であったため、Fas発現制御の転写因子同定を行った。転写因子は共因子と結合し、特定の時期・位置での遺伝子発現プログラムを制御する転写制御モジュールを構成する。我々は転写因子の再構成のために、実験的に同定された遺伝子位置に対して、局所モチーフエンリッチメント解析データ、細胞種ごとの発現量データおよびタンパク質-タンパク質相互作用を考慮した新しい包括的計算方法(rTRM)を開発した。タンパク質は他のタンパク質との相互作用により機能を実現しており、タンパク質-タンパク質相互作用データを考慮している点で、rTRMは他の方法よりも選択的に優位である。rTRMにより、マクロファージでのIL-10を介した抗炎症反応でのE2F1とSTAT3については、その特異的な相互作用を予想し、実験的にも検証できた。したがって、rTRMは、Fasなどの発現制御に関与する転写因子を解析するための、強力な新手法となりうる(Diez, Hutchins and Miranda-Saavedra (2013) in review)。本研究計画における2年間で、研究目的を達成することができた。また、新しく強力なツールを開発し、重要な予想に対して実験的に検証でき、転写制御機構の理解に重要な貢献をしたと考えられる。
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