当該年度(平成25年度)は「水平伝播を利用したクローニングシステム」の効率を向上させるための条件検討を重点的に行なった。昨年度までに供与菌(大腸菌)が持つヌクレアーゼ(endA)が、溶菌液中でのDNA安定性に大きく影響することが認められたので、ヌクレアーゼ阻害剤の効果を検討した。その結果エンドヌクレアーゼ阻害剤の一つであるオーリントリカルボン酸 (ATA)を加えることでendA保持株でも大腸菌から枯草菌への安定な水平伝播が可能になった。また溶菌液中には供与菌(大腸菌)のゲノムも大量に放出されており、受容菌(枯草菌)へのDNA取込みにおいて競合阻害を引き起こしていると予想されたため、ゲノムDNAを除去する目的でエキソヌクレアーゼを溶菌液に加えたところコロニー形成率が2倍~10倍に上昇し、促進剤として有効であることも判明した。以上、「水平伝播を利用したクローニングシステム」の汎用性の拡大、クローニング効率上昇について一定の成果を上げることができた。これらの条件は複数の連続的なクローニングを行なう上で重要であり、従来の手法を簡略化、迅速化する上で非常に有効である。しかしながら複数の供与菌を同時に混合する手法については受容菌(枯草菌)の選択方法を工夫する必要がある。2つのcIリプレッサー遺伝子を用いたポジティブセレクション法は有効であったが、更なる選択法の改善を今後検討して行かなければならない。 以上3年間の研究により、「水平伝播を利用したクローニングシステム」の基盤技術を確立することができた。これまでの研究で高効率化の条件や遺伝子集積、ゲノム合成に向けた様々な可能性を引き出すことができた。今後、本研究内容をさらに進展させ、より実用的なクローニング技術として確立させて行くとともに様々な応用範囲(供与菌と受容菌の組み合わせなど)を拡大させて行きたい。
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