研究課題/領域番号 |
23710240
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
ウォルツェン クヌート 京都大学, iPS細胞研究所, 助教 (50589489)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | iPS細胞 / SNP / long QT-syndrome / 遺伝子ターゲティング / TALEヌクレアーゼ / トランスポゾン |
研究概要 |
ヒト個人が持つ一塩基多型(SNPs)は、特定の疾患への罹患率を上昇させる原因となる。iPS細胞樹立の技術とin vitroでの遺伝子改変の技術を組み合わせることによって、患者個人のゲノム情報に基づいた疾患機能解析を行うことが可能となる。現在までの技術では、遺伝子操作によってゲノムの中から特定のSNPsのみを改変、修正する事は不可能であった。しかし、ゲノムに挿入後痕跡を残さずに削除することができるトランスポゾンの性質を利用すれば、一塩基レベルでの遺伝子の改変、修正を行うことが可能になる。本研究の目的は、iPS細胞において疾患関連遺伝子変異(特にlong QT-syndromeに関与する遺伝子変異)を導入あるいは修正することである。まず、CiRAが保有する筋肉変性疾患、神経変性疾患、心臓疾患患者の細胞から樹立した疾患ヒトiPS細胞を利用し、研究を行なった。本年度は、それらiPS細胞の遺伝子型および特性を解析しし、BACから作製した標準的なターゲティングベクターを利用した遺伝子ターゲティングを試みたが、効率が非常に悪く、遺伝子ターゲティングは成功しなかった。そこで、効率の良い新たな遺伝子ターゲティング法の開発を行なった。広島大学の山本卓教授と共同でTALEヌクレアーゼ (TALEN)を利用した方法を確立することに成功した。この新しい遺伝子ターゲティング手法は本研究課題にとって非常にに有用でありかつ様々な多くの研究に応用可能である。本研究手法を用い、より多くの遺伝子に対して遺伝子改変を行なっていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、CiRA内での共同研究によりエピソーマルによって樹立された正常および疾患iPS細胞を用いて研究を行なった。まず、SNPアレイやダイレクトシーケンシングを用いて、それら細胞の遺伝子型の解析を行なった。さらに、効率の良い遺伝子ターゲティング法(TALENs)を確立し、HPRT遺伝子破壊、およびAAVS1領域にtransgene cassetteを導入した。また、FACS解析やソーティング技術を用いて、piggyBACトランスポゾンを取り除く効率の良い条件を検討した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、TALENsを用いた遺伝子ターゲティングに焦点を絞って研究を行なう。疾患関連遺伝子破壊、SNPの改変や修正をiPS細胞の遺伝子型に合わせて行なう。TALENsを用いた遺伝子ターゲティングは、多くの解析を可能にすると考えられる。改変や修正を行なった遺伝子の機能解析や導入した細胞の解析も併せて行なう。遺伝子ターゲティングを行なったiPS細胞を、CiRAで確立されているプロトコルによって分化させ、分化細胞を評価する。分化実験においては、CiRA内の他の研究室との共同研究により、より良い分化技術を導入する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本プロジェクトに必要な機器、装置類はすでに完備されているので、次年度は主に分子生物学や細胞培養に必要な消耗品の購入に研究費を使用する。TALENのコンストラクションに必要な制限酵素、DNA精製キット、DNAシーケンシング関連試薬、スクリーニングに使用するDual-Gloルシフェラーゼキット、遺伝子型解析に必要なポリメラーゼ酵素、サザンブロッティングに必要なDIG-labelingキットなど分子生物学実験にかかる費用である。さらに、遺伝子導入に必要なDNAトランスフェクション試薬、エレクトロポーレション関連試薬、細胞培養に必要なプラスティック容器、培地、細胞分化実験に必要な各種サイトカインや化合物も購入する。また、研究の情報収集や学会発表のための国内旅費にも使用する予定である。
|